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平野悠「ロフト」創業者

1944年8月10日、東京都生まれ。71年の「烏山ロフト」を皮切りに西荻、荻窪、下北沢、新宿にロフトをオープン。95年に世界初のトークライブ「ロフトプラスワン」を創設した。6月、ピースボート世界一周航海で経験した「身も心も焦がすような恋」(平野氏)を描いた「セルロイドの海」(世界書院)を刊行。作家デビューを果たした。

「ワラシ」森田童子の引退ライブは葬式のように静かだった

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 後に彼女のダンナとなるマネジャーのMさんとレコード会社は「明るくて万人受けする曲」を作ってメジャーの仲間入りを狙っていたが、ワラシはかたくなだった。

 新宿ロフトでの引退ライブ。初期の曲をメインに選び、いつものように客席は静かだった。

 彼女が「この曲を最後に歌手生活に終わりを告げることにします」と話しても、店内はまるで葬式のようにシーンとしていた。選曲自体、最後のこだわりだったと思う。

 ライブの後、いつものようにレコード即売会を開いた。ファンの差し出すレコードすべてに長いメッセージを丁寧に書き込んでいた。これも見慣れた光景だった。

 亡くなる前年の17年のころから体調を崩し、入退院を繰り返していたと聞いた。76年リリースの「ぼくたちの失敗」が93年にテレビドラマのテーマ曲に採用され、瞬く間に100万枚の大ヒットになっても、ワラシは素顔も本名も明かさず、ひっそりと生きていた。

 森田童子の歌声はか細く、柔らかく、幻想的だった。彼女がステージで流す涙が、あまり話題にならなかったのは、ステージの暗く落とした照明のせいだったのか……。

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