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伊藤さとり映画パーソナリティー

映画コメンテーターとして映画舞台挨拶のMCやTVやラジオで映画紹介を始め、映画レビューを執筆。その他、TSUTAYA映画DJを25年にわたり務める。映画舞台挨拶や記者会見のMCもハリウッドメジャーから日本映画まで幅広く担当。レギュラーは「伊藤さとりと映画な仲間たち」俳優対談&監督対談番組(Youtube)他、東映チャンネル、ぴあ、スクリーン、シネマスクエア、otocotoなど。心理カウンセラーの資格から本を出版したり、心理テストをパンフレットや雑誌に掲載。映画賞審査員も。 →公式HP

コロナ禍とシネコン 要請緩和も公開作渋滞でテンヤワンヤ

公開日: 更新日:

 2021年4月末から3度目の緊急事態宣言で休業要請・協力依頼を出されていた東京都内の映画館。存続の為にも感染対策をしながら上映を続けていたミニシアターと違い、要請を受け休館していたシネマコンプレックス(以下「シネコン」)が映画の日である6月1日から再開となりました。

 早速、再開初日の午前中にTOHOシネマズ渋谷へ行くと、入り口には上映期間中に都内のシネコンを閉められてしまった『るろうに剣心 最終章The Final』の再スタートを知らせるポスターが飾られていました。

 場内へ進むとコロナ禍から徹底している入り口での体温チェック、劇場内では「上映スタートから飲食可、終始マスクを着用」という場内でマスクを外してお喋りをしながら食事をすることを避けるための注意書きをスタッフが手に持って立っていました。今回の休業要請暖和に伴い、前回同様、隣接する前後左右の席の販売をやめ、今後は都の規定通り全体の50%の動員、21時までの営業を続けることになります。

■スクリーンが大渋滞? これから劇場が直面する難題

 都内シネコンのラインナップを見ると洋画メジャー作品の上映が少ないことに気づかされます。幸い5月28日から配信、劇場公開のディズニー映画『クルエラ』は好調で平日も幅広い世代が映画館へと足を運んでいます。

 上映ラインナップは具体的にどのように決まるのでしょうか。洋画メジャー配給会社の関係者によると、まずはアメリカが最初に劇場公開もしくは同日公開という前提で、緊急事態宣言下では本国と協議のうえ公開日を決定することが多く、今月公開の『クワイエット・プレイス 破られた沈黙』も当初の5月28日から6月18日にずれ込み、『ピーター・ラビット2/バーナバスの誘惑』も2020年5月22日から今年の6月25日に変更となりました。これらを踏まえると、クリストファー・ノーラン監督の意向により、全米公開よりも先に世界順次公開となった『TENETテネット』(20年9月18日公開)は異例であったことが分かります。

 今後は、ゴールデンウィークの期間中、一時休館せざるを得ない状況から延期を決定したファミリー向け、大衆向けの邦画も公開されます。つまり、途中で途切れてしまった映画を再上映しつつ、公開を控える邦画、洋画メジャーも踏まえて編成を組まねばならず、「苦渋の選択を迫られることになりそうだ」と劇場関係者(立川シネマシティ)は話しています。確かに限られたスクリーン数で沢山の映画をバランスよく上映するのは至難の技。

 私個人の考えでいうと、これを機に今までのように『鬼滅の刃』など集客を見込める大作を一つのシネコンで、3スクリーン以上で上映するようなことを辞め、今後はバラエティーに富んだ様々な映画を上映して、一日中でも観客が映画館にいたいと思えるラインナップを組んで欲しいと願っています。

クラスター発生ゼロ 映画の火を灯し続けるために

 コロナ禍で映画業界は対策を練ってきました。映画製作時は、俳優からスタッフまでPCR検査を受けて撮影に入ることが増え、映画館では、全国興行生活衛生同業組合連合会(全興連)が制作した専門家の指導の元に映画館での空気を写し出した「換気対策の映像」を幕間に上映。

 映画宣伝部は、舞台挨拶をする際は、登壇する俳優の間にアクリル板を置く、もしくは1.5メートル以上距離を取ってもらい、スタッフはマスクを着用、観客にはマスクはもちろん声を出さないようにアナウンスするという徹底ぶり。作品によっては登壇者やスタッフも予めPCR検査をすることもあり、この努力から映画館でクラスター発生はゼロのまま一年以上続くコロナ禍で映画の火を灯し続けてきたのに、今回の休業要請は理不尽であり、大きな痛手となりました。

 映画を作り、宣伝し、劇場で流すという数えきれない数の人々が関わっている映画界。人流が起こるといえども上映時間により入場制限があらかじめ決められている映画館は、前にあるスクリーンを声を出さずに見つめるので唾が飛ぶ危険もなく、ソーシャルディスタンスも保たれた換気の行き届いた約2時間の滞在場所。二度と休業要請が出ないことを祈り、ミニシアターで世界各国を映像体験し、『ゴジラvsコング』の雄叫びと肉弾戦を大スクリーンで心置きなく堪能して欲しいと強く願っています。

【連載】伊藤さとり「シネマの出来事、シネマな人たち」

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