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伊藤さとり映画パーソナリティー

映画コメンテーターとして映画舞台挨拶のMCやTVやラジオで映画紹介を始め、映画レビューを執筆。その他、TSUTAYA映画DJを25年にわたり務める。映画舞台挨拶や記者会見のMCもハリウッドメジャーから日本映画まで幅広く担当。レギュラーは「伊藤さとりと映画な仲間たち」俳優対談&監督対談番組(Youtube)他、東映チャンネル、ぴあ、スクリーン、シネマスクエア、otocotoなど。心理カウンセラーの資格から本を出版したり、心理テストをパンフレットや雑誌に掲載。映画賞審査員も。 →公式HP

「夏への扉」で痛感!山﨑賢人は“等身大”の成長物語で輝く

公開日: 更新日:

 俳優のインタビューでよく耳にするのが「普通であること」というワード。これは俳優にはとても大切なことで、毎回、「スター・ウォーズ」よろしく遥か彼方の銀河系が舞台になるわけではなく、普通の人の日常の出来事をつづった作品から観客は主人公にシンクロし、気付けば驚きの体験をするというのがドラマ映画的な展開というもの。なので、誰もが惚れ惚れする完璧過ぎるルックスの人物よりも、“あら、なんか魅力的!”くらいの人が俳優として重宝されるのです。

 その点を踏まえると「普通の役」が似合う俳優の代表格に当たるのが、山﨑賢人さん(26)ではないでしょうか。あ、もちろんイケメンでありますが(笑)。

人柄から滲み出る“親近感”

 私が最初に仕事として彼と出会った映画は、「Another」(2012)という綾辻行人のホラー小説を実写化した彼の主演作。学園ホラーであり、目をまん丸くさせて驚く顔がなんとも初々しい山﨑賢人さんと美少女・橋本愛さんの共演が印象的な一作でありました。

 その後も大ヒットを記録した「L・DK」(2014)を始めとした学園モノ、恋愛モノの映画やドラマに主演として常にセンターに立つ彼にはどこか頼りなさがあり、母性本能をくすぐられ、ハートを射抜かれた人多数。すごいのは、彼自身の人柄としても初めて会った時から何度再会を果たしても、人気俳優になったというのにデビュー当時と変わらず、驕らず、謙虚で好青年ということ! こんな俳優はなかなかおりません。言い換えるなら“親近感”を全身に纏っている俳優という感じでしょうか。

待望の主演最新作「夏への扉」は“スパイダーマン”的魅力

 そんな普通っぽさが最大の魅力となる山﨑さんが輝くジャンルというと、私はなんとなく「恋愛モノ」だと思ってたのですが、そんな私の考えは浅はかでありました。実は彼は、普通の青年が突如、困難に遭遇し、がむしゃらに乗り越えながら成長していくスパイダーマン的魅力の持ち主だったのです。

「キングダム」(2019)しかり、Netflixオリジナルドラマ「今際の国のアリス」(2020)しかり、特にロバート・A・ハインラインの小説を実写化した6月25日劇場公開となる新作「夏への扉―キミのいる未来へ―」は最たるもの!

 映画は、猫と暮らす若き科学者・宗一郎が、信頼していた人からの裏切りにより、全てを失っただけでなく冷凍睡眠装置で眠りにつかされ、2025年の未来で目を覚まします。すっかり変わった世界を目にし、大切なものを取り戻そうと奮闘するタイムリープモノです。

 山崎さんは、ロボット工学にしか興味が無くて、ボーッとしているせいか女性にも騙されてしまう主人公・宗一郎役で、恩人の娘(清原果耶)からのほのかな恋心にも全く気がつかない鈍感な青年。目覚めた未来で出会う相棒(藤木直人)のサポートを受けて、少しずつ頼り甲斐ある男性に成長し、時空を行き来しながら愛する猫と恩人の娘に訪れた危機を救おうと大忙し。そして映画の後半には迷いの無い瞳を持つヒーローに変身を遂げていました。

 あらためて上手いなぁと思うのは、セリフの無い演技。小さく動揺したり、ちょっと驚いたり、声にならない心の動きを瞳孔の開き具合や歩き方で見せたり。そんな表情や細やかな仕草で主人公の成長を表現することで、私たち観客は「銀河鉄道999」的な“そして少年は大人になる”をスクリーンを通して見届けるのです。

■愛おしくて切ない

 また個人的に印象深かったのが、主人公が恩人の娘とウォークマンのイヤホンをシェアして聴いているMr.Childrenの名曲「CROSS ROAD」。これがまた名シーンで愛おしいやら切ないやらで、観賞後には気付くと口ずさみ、ヘッドフォンでヘビーローテーションしている可能性も? それだけさりげないシーンが印象的なのは、この2人の俳優だからこそ。

 完全無欠の人間よりも、どこかほつれている人間の方が愛しい。俳優はそうであってほしいと個人的には思っています。そして普通の人の役ほど、実は難しく、一見気付きづらい演技アプローチで、ジワジワと目を離せなくなる人間味を醸し出すことが必要なんだと「『夏への扉』の山﨑賢人」を見ていると実感してしまうのです。

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