荒木経惟
著者のコラム一覧
荒木経惟写真家

1940年、東京生まれ。千葉大工学部卒。電通を経て、72年にフリーの写真家となる。国内外で多数の個展を開催。2008年、オーストリア政府から最高位の「科学・芸術勲章」を叙勲。写真集・著作は550冊以上。近著に傘寿記念の書籍「荒木経惟、写真に生きる。荒木経惟、写真に生きる。 (撮影・野村佐紀子)

<55>都立上野高校の同級生だった立花隆氏を偲ぶ…立花、もう一度、撮りたかったよ

公開日: 更新日:

 立花隆は(都立)上野高校の同級生なんだ。立花は、オレの展覧会やオーストリアから勲章をもらったときの大使館の式にも来てくれてね。でも、高校の頃は話したことがなかったの。立花は頭良くて東大受験生のコースだからさ、教室も違ったからね(ジャーナリストでノンフィクション作家の立花隆は、4月30日に急性冠症候群のため80歳で亡くなった)。

 オーストリア大使館での勲章のパーティーでは、立花が乾杯の音頭をとってくれたんだよ。大統領からの祝辞の後に、向こうから来た教授が勲章について説明してくれたんだけどさ、それを立花が、どんなにすごい勲章かってことを説明してくれてね。あいつ、説明うまいからさ、立花のおかげで男が上がったんだよね(笑)。来てくれて、嬉しかったね(2008年にオーストリア政府から世界的に活躍する芸術家と科学者に贈られる最高位の「オーストリア科学・芸術勲章」を荒木が日本人として初めて受章。勲章伝達式がオーストリア大使館で行われた。連載1に掲載)。

「『坂口安吾賞』はアラーキーにピッタリだ」と言ってくれた

 新潟の安吾賞のときにも、立花が祝いのメッセージをくれてね(2011年、荒木が新潟市主催の「第6回安吾賞」を受賞。受賞者発表会に立花がお祝いのメッセージを寄せた。「坂口安吾賞と聞いて、ああ、それは、アラーキーにぴったりだと思った。アラーキーは平成の無頼派そのものだ。アラーキーがこれまでもらった数々の賞の中には、いろいろ御大層な賞も沢山あるけれど、ピッタリと言う意味では、これがいちばんだ。安吾の写真といえば、林忠彦、中村正也、濱谷浩などいろんな写真家の撮ったものが有名だけど、もし安吾が生きていて、自分が撮ってもらいたい写真家を選べるとしたら、迷わずにアラーキーを指名したと思う(後略)」)。

 この写真は、『ダ・ヴィンチ』(連載「アラーキーの裸ノ顔」)で撮ったポートレートなんだよ。立花の猫ビルの事務所で撮ったんだけど、本が山積みで距離がとれないわけよ。もうちょっと近づきたいんだけど、本があって、平積みの場所もあるし、外でなくてそこで撮りたかったからね。もうちょっと近づいて撮りたかった。

 何年前かなぁ、大学病院の血液検査の採血を待っている所で立花に会ってね、話したんだよ。いろんな病気を抱えて産婦人科以外は全部まわったって言ってたね。もう、覚悟しててね……。立花、もう一度、撮りたかったよ……。 

(構成=内田真由美)

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