著者のコラム一覧
荒木経惟写真家

1940年、東京生まれ。千葉大工学部卒。電通を経て、72年にフリーの写真家となる。国内外で多数の個展を開催。2008年、オーストリア政府から最高位の「科学・芸術勲章」を叙勲。写真集・著作は550冊以上。近著に傘寿記念の書籍「荒木経惟、写真に生きる。荒木経惟、写真に生きる。 (撮影・野村佐紀子)

<89>写真の頂点は「ポートレート」背景を無地にすると人生が写るんだよ

公開日: 更新日:

 10年前になるんだね、オレの写真集の展覧会をイズフォト(ミュージアム)でやってくれたんだよ。それまでに出した写真集を全部集めて、壁に並べてくれたんだ。並べるだけじゃなくて、本を1冊1冊、手にとって見ることもできるようにしてくれてさ。自分でも忘れちゃってる写真集もあったしね、オレの手元にないのもある。おっ、こんな本もあったなとかね、全部見ることができるなんて嬉しいよねぇ。

 その展覧会で、「毎日芸術賞」をもらったんだよ(2012年にIZU PHOTO MUSEUMで「荒木経惟写真集展 アラーキー」を開催。電通時代に制作したスクラップブックの写真集から最新刊まで454冊の写真集・著書を展示、そのほぼすべての本を実際に手にとり、ページをめくって見ることができる展覧会。この展覧会により、「第54回毎日芸術賞」特別賞を受賞)。

三津五郎さん、いいねぇ~。いい人だったのに…

「毎日芸術賞」の授賞式でね、坂東三津五郎さんと会ったんだよ(2013年1月、贈呈式・祝賀パーティーが開催された)。受賞者が一緒に並んでね、隣でさ、オレが見初めたんだもん(笑)。(雑誌連載「アラーキーの裸ノ顔」で)撮らせてくれって、直接くどいたんだよ。嬉しそうにニコニコしてくれてね。

 この写真、いいねぇ~。いい人だったのに、亡くなっちゃったなぁ。これからだったのになあ……(三津五郎は2015年、すい臓がんのため59歳で永眠)。改めて、サシで撮りたかったからさ、背景を無地にしてね。わざわざ、(撮影)スタジオに来てもらって撮ったんだよ。

背景を無地にして、サシでみんな撮りたい

 やっぱりね、今は、背景は無地だって言ってるんだ。無地にすると写るんだよね、そのときの時とかなんかが。もっと大袈裟に言うと、その人の過ごしてきた人生っつうか、これからの人生、予感っつうかさ。無地にするとでちゃうからね、本人がでるから。三津五郎さんもね、歌舞伎座で撮ると、あの世界の雰囲気や時間が写り込んじゃうから。それをなしにして、背景を無地にして、サシでみんな撮りたいという時期なんだ、今。やっぱり、写真の頂点はポートレートなんだよ。

(構成=内田真由美)

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    立花孝志容疑者を"担ぎ出した"とやり玉に…中田敦彦、ホリエモン、太田光のスタンスと逃げ腰に批判殺到

  2. 2

    阪神・佐藤輝明にライバル球団は戦々恐々…甲子園でのGG初受賞にこれだけの価値

  3. 3

    FNS歌謡祭“アイドルフェス化”の是非…FRUITS ZIPPER、CANDY TUNE登場も「特別感」はナゼなくなった?

  4. 4

    阪神異例人事「和田元監督がヘッド就任」の舞台裏…藤川監督はコーチ陣に不満を募らせていた

  5. 5

    新米売れず、ささやかれる年末の米価暴落…コメ卸最大手トップが異例言及の波紋

  1. 6

    兵庫県・斎藤元彦知事らを待ち受ける検察審の壁…嫌疑不十分で不起訴も「一件落着」にはまだ早い

  2. 7

    カズレーザーは埼玉県立熊谷高校、二階堂ふみは都立八潮高校からそれぞれ同志社と慶応に進学

  3. 8

    日本の刑事裁判では被告人の尊厳が守られていない

  4. 9

    1試合で「勝利」と「セーブ」を同時達成 プロ野球でたった1度きり、永遠に破られない怪記録

  5. 10

    加速する「黒字リストラ」…早期・希望退職6年ぶり高水準、人手不足でも関係なし