人気イラストレーターの犬をテーマにした作品を集めた画集「まないぬのまにまに」くまおり純著
「まないぬのまにまに」くまおり純著
人気イラストレーターの犬をテーマにした作品だけを集めた画集。
巻頭に「はっちゃんの生まれた日」という同タイトルの作品がいくつも並ぶ。タイトルと制作年しか添えられていないので詳細は分からないが、「はっちゃん」は顔の毛に黒い部分が多くまだ幼犬のようであるが、生まれたばかりの赤ちゃんには見えない。
おそらく飼い主と出会い「はっちゃん」と名付けられた日のことを描いた作品だと思われる。
ゆえにその日を記念して毎年のように描いたのではなかろうか。絵の中の犬は、ちょっと寂しげであり、不安をただよわせる瞳をしながらも、まっすぐに飼い主を見つめており、これから始まる飼い主と愛犬との日々が予感される。
以降は、成長したはっちゃんと思われる柴犬を中心に、犬たちが心を許した飼い主だけに見せるさまざまな表情やしぐさを温かみのある独特なタッチで描く。
海辺での散歩中に打ち寄せては引く波を見て、飼い主を振り返った姿を描く作品のタイトルは「どうする?」。このまま海に飛び込んでもいいかと飼い主に問うているのだろうか。かと思えば、夕焼けの凪の海に入り込んで「もうかえるよ」と促されている姿を描いた作品もある。
「おつかれさま」という作品では、ガウガウ遊びの標的にされ、綿が四方八方に飛び出たクッションの残骸の横で満足げに眠る犬、そして雨の日の散歩に着せられる合羽が嫌いなのだろう、「ゆるさない」という作品は合羽を着せられた犬がどんよりとうつむいている。
お昼寝をしていたら、飼い主にちょっかいを出されてヘアスタイルが変わってしまった「やわやわおでこ」、飼い主が見ているとも知らずに耳の後ろをかいていた後ろ脚をペロッとなめて「味見する」など、連作風の作品もある。
かと思えば、後ろ脚を前脚で抱え込んで丸くなって幸せそうに寝ていたり(「かわいい眠り方」)、隠れんぼのつもりかカーテンの裏側に入ってみたり、いないいないばあをしているつもりなのかうれしそうにそのカーテンの裏から出てきた「カーテンと犬」シリーズなど、何をしていても犬は可愛く、見ているだけで飽きることがない飼い主の気持ちが作品から伝わってくる。
草むらで用(大の方)を足しているときに見せるウルウルとした瞳など、飼い主だけが知る愛犬のなんとも言えない表情を描いた作品(「きゅるきゅる」というタイトルはもしかしたらお腹の調子が悪かったのか?)もあり、犬を飼ったことがある人は共感を抱くこと間違いなし。
時には「視線」と題された表紙の作品のように、ひたすら飼い主を見つめて何かを伝えようとしているときもある。
そんな喜怒哀楽をストレートに飼い主にぶつけてくる犬のありとあらゆる表情が全171作品で描かれ、どの作品からも犬へのいとおしさがあふれ出ている。
(芸術新聞社 2970円)



















