著者のコラム一覧
山田勝仁演劇ジャーナリスト

こまつ座「頭痛肩こり樋口一葉」一葉への哀切に満ちた鎮魂歌

公開日: 更新日:

 1984年に初演されて以来、再演を重ねている井上ひさしの人気作で、明治の小説家・樋口一葉の晩年の19歳から死後2年までを描いたもの。演出は名手・栗山民也。

 父と兄に先立たれ、若くして樋口家の戸主となった夏子(一葉=貫地谷しほり)。母・多喜(増子倭文江)と妹・邦子(瀬戸さおり)の生活を支えるために、命を削って物語を紡いでいく。

 盂蘭(うら)盆の夜(7月16日)、夏子の前に現れたのは、身請けの大金を通りすがりの婆さんにネコババされたことで自死した遊女の幽霊・花蛍(若村麻由美)。花蛍が見えるのは、生きることに疲れ、幽界に半身を入れた夏子だけ。近しさを感じた花蛍は年に一度、盂蘭盆に夏子の家を訪れるようになる。

 花蛍は夏子に諭され、自分の死の原因となった婆さんがなぜネコババしたのかを追及していくうちに、因縁の連鎖は皇后にまでたどり着く。その皇后も「上一人」が「諸外国に追いつくため一時の休みもなく心を砕く姿に自分が何もしてやれないのでじれったくなって華族の公爵夫人を無視した」と言う。恨みの連鎖に先がないことを知った花蛍は人ではなく、世の中全体にとりつかなければ恨みを晴らせないことに気づく。つまり、世の中の仕組み自体に問題があることを知るのだ。

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • 芸能のアクセスランキング

  1. 1

    武田鉄矢「水戸黄門」が7年ぶり2時間SPで復活! 一行が目指すは輪島・金沢

  2. 2

    松任谷由実が矢沢永吉に学んだ“桁違いの金持ち”哲学…「恋人がサンタクロース」発売前年の出来事

  3. 3

    生田絵梨花は中学校まで文京区の公立で学び、東京音大付属に進学 高3で乃木坂46を一時活動休止の背景

  4. 4

    未成年の少女を複数回自宅に呼び出していたSKY-HIの「年内活動辞退」に疑問噴出…「1週間もない」と関係者批判

  5. 5

    早瀬ノエルに鎮西寿々歌が相次ぎダウン…FRUITS ZIPPERも迎えてしまった超多忙アイドルの“通過儀礼”

  1. 6

    2025年ドラマベスト3 「人生の時間」の使い方を問いかけるこの3作

  2. 7

    2025年は邦画の当たり年 主演クラスの俳優が「脇役」に回ることが映画界に活気を与えている

  3. 8

    佳子さま“ギリシャフィーバー”束の間「婚約内定近し」の噂…スクープ合戦の火ブタが切られた

  4. 9

    池松壮亮&河合優実「業界一多忙カップル」ついにゴールインへ…交際発覚から2年半で“唯一の不安”も払拭か

  5. 10

    国分太一「人権救済申し立て」“却下”でテレビ復帰は絶望的に…「松岡のちゃんねる」に一縷の望みも険しすぎる今後

もっと見る

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    DeNA三浦監督まさかの退団劇の舞台裏 フロントの現場介入にウンザリ、「よく5年も我慢」の声

  2. 2

    日本ハムが新庄監督の権限剥奪 フロント主導に逆戻りで有原航平・西川遥輝の獲得にも沈黙中

  3. 3

    佳子さま31歳の誕生日直前に飛び出した“婚約報道” 結婚を巡る「葛藤」の中身

  4. 4

    国分太一「人権救済申し立て」“却下”でテレビ復帰は絶望的に…「松岡のちゃんねる」に一縷の望みも険しすぎる今後

  5. 5

    白鵬のつくづくトホホな短慮ぶり 相撲協会は本気で「宮城野部屋再興」を考えていた 

  1. 6

    藤川阪神の日本シリーズ敗戦の内幕 「こんなチームでは勝てませんよ!」会議室で怒声が響いた

  2. 7

    未成年の少女を複数回自宅に呼び出していたSKY-HIの「年内活動辞退」に疑問噴出…「1週間もない」と関係者批判

  3. 8

    清原和博 夜の「ご乱行」3連発(00年~05年)…キャンプ中の夜遊び、女遊び、無断外泊は恒例行事だった

  4. 9

    「嵐」紅白出演ナシ&“解散ライブに暗雲”でもビクともしない「余裕のメンバー」はこの人だ!

  5. 10

    武田鉄矢「水戸黄門」が7年ぶり2時間SPで復活! 一行が目指すは輪島・金沢