著者のコラム一覧
松尾潔音楽プロデューサー

1968年、福岡県出身。早稲田大学卒。音楽プロデューサー、作詞家、作曲家。MISIA、宇多田ヒカルのデビューにブレーンとして参加。プロデューサー、ソングライターとして、平井堅、CHEMISTRY、SMAP、JUJUらを手がける。EXILE「Ti Amo」(作詞・作曲)で第50回日本レコード大賞「大賞」を受賞。2022年12月、「帰郷」(天童よしみ)で第55回日本作詩大賞受賞。

中森明夫氏の新刊「TRY48」は父親殺しの書でもあり、昭和へのレクイエムである

公開日: 更新日:

 虚実ないまぜとはこのこと、事実と妄想が織りなすまだら模様こそは、著者の企みと筆力の見せどころ。物語終盤、それぞれ80代後半と90代後半の寺山と三島は対談を行い、丁々発止のやりとりを展開する。一部を以下引用しよう。

寺山「中上(健次)は46歳で亡くなったんですね。僕が47歳、三島さんが45歳で死に損なったのに」

三島「ああ、そうか、小説はともかく……人間としては、ほら、大江くんなんかよりよっぽど面白い奴だったけどなあ」

 実際に寺山が亡くなったのは1983年の5月だが、同年7月にデビュー作『優しいサヨクのための嬉遊曲』で初めて芥川賞候補に挙がり、惜しくも落選した島田雅彦についてはこんな具合。

寺山「三島先生は、島田雅彦という作家をご存じですか?(略)芥川賞を受賞しました。22歳。当時の最年少受賞者ですね。受賞発表の夜にパーティーの二次会の後、呑み屋の階段から転げ落ちて、頭を強く打って死にました」

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