中森明夫「寺山修司を語るな! 寺山修司を生きろ!」

公開日: 更新日:

 2023年は、寺山修司の没後40年だ。寺山は、昭和の鬼才である。短歌、詩、小説、評論、演劇映画、競馬予想からボクシング観戦記まで、多彩に活躍した。

 昭和10年青森県生まれ。「寺山すうじデシ」といった強烈な東北なまりが、若きタモリに物真似されたりもした。18歳で上京して早稲田大学に入学、すぐに短歌賞を受賞する。“昭和の石川啄木”と称えられた。が、その短歌が高名な俳人の句を剽窃していたとして「盗作魔!」と猛批判された。

 10代でのお騒がせデビューから、晩年、渋谷の路地裏で“覗き”疑惑で逮捕されるに至るまで、一貫して希代のスキャンダリストだった。ライバル・唐十郎と寺山と両者の劇団員らが路上で乱闘騒動を繰り広げ、デカデカと新聞に載った。文化面ではない、社会面だ。そう、寺山は本紙のようなタブロイド夕刊紙の紙面がよく似合う。盛り場の雑踏をコートの襟を立てて彷徨する、反逆的な裏街詩人だった。

■日刊ゲンダイで「人生万才」を連載

 実は、寺山修司と「日刊ゲンダイ」には縁がある。本紙は1975年10月に創刊された。翌76年3月27日号から寺山の連載が始まる。なんと見開き2ページを丸々ジャックした新聞内メディアだ。「人生万才」と題する。

<新しいページができました。これは新聞のかたちをかりた人生劇場です。見知らぬ人同士がこのページを通して出会い、「心は孤独な猟人」たちが言葉をかわしあう2ページです。何をやってもうまくいかない裏町の読者諸君も、口の運動のつもりで言ってみて下さい。“人生万才、人生万才!!”>

 寺山が編集長を務め、さまざまな異色企画が紙面狭しと躍り、飛び回る。女子大生が書いた学生証つきのポルノ小説がある。一般人の人気投票がある。有名人のゴミ箱あさりがある(これらの企画は後に他メディアでパクられた)。自分広告と称して投稿を募り、「パトロン募集中です」「結婚してください」「強姦してあげます」等が載る。19歳の女子美術学生が<100円ヌード/私のヌードを撮ってください>と顔写真入りで募集している。

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    ヤクルト村上宗隆と巨人岡本和真 メジャーはどちらを高く評価する? 識者、米スカウトが占う「リアルな数字」

  2. 2

    大山悠輔が“巨人を蹴った”本当の理由…東京で新居探し説、阪神に抱くトラウマ、条件格差があっても残留のまさか

  3. 3

    中山美穂さんの死を悼む声続々…ワインをこよなく愛し培われた“酒人脈” 隣席パーティーに“飛び入り参加”も

  4. 4

    ロッテ佐々木朗希は母親と一緒に「米国に行かせろ」の一点張り…繰り広げられる泥沼交渉劇

  5. 5

    大谷翔平の28年ロス五輪出場が困難な「3つの理由」 選手会専務理事と直接会談も“武器”にならず

  1. 6

    陰で糸引く「黒幕」に佐々木朗希が壊される…育成段階でのメジャー挑戦が招く破滅的結末

  2. 7

    豊作だった秋ドラマ!「続編」を期待したい6作 「ザ・トラベルナース」はドクターXに続く看板になる

  3. 8

    巨人・岡本和真の意中は名門ヤンキース…来オフのメジャー挑戦へ「1年残留代」込みの年俸大幅増

  4. 9

    悠仁さまは東大農学部第1次選考合格者の中にいるのか? 筑波大を受験した様子は確認されず…

  5. 10

    中山美穂さんが「愛し愛された」理由…和田アキ子、田原俊彦、芸能リポーターら数々証言