松尾潔(前編)この国を覆う「忖度」の空気をつくる、多くの言葉たち

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ラブソングと同じ口でプロテストソングを

 ──それも興味深いタイトルではあります。

松尾 日本には寡黙を良しとする風潮が長くはびこっていますよね。「男は黙ってサッポロビール」っていうコピーもはやったし、「以心伝心」とか「言うほど野暮じゃない」とか、結構あります。寡黙の良さもわかるけど、以前からそういった言葉の多くが、この国を覆う忖度の空気をつくっている気がするんです。

 ──それで「おれの歌を止めるな」が残った。「政治の話をした口でラブソングを歌おう」という松尾さんなりの決意表明とも取れます。

松尾 僕は20代の頃から音楽ライターとして、黒人ミュージシャンを中心に取材をしてきたんだけど、彼ら自身がそうでした。マービン・ゲイもビヨンセも、みんなベッドルームで聴くラブソングも歌えば、同じ口でホワイトハウスに向けてのプロテストソングも歌う。そのことが常に頭の中にあって。

 ──そもそも、日刊ゲンダイ連載を始めるきっかけは何だったんでしょう?

松尾 3年前に「東京五輪2020」についてコメントを寄せたことにさかのぼります。22年前の「日韓Wカップ」のとき公式ソングを作ったりもしたので、その経験も踏まえて「音楽と国際的なスポーツの祭典と政治はすべて地続きである」みたいな話をしたんです。

 ──音楽の政治利用ですね。

松尾 事実、ナチスも音楽を大いに政治利用しましたから「常に緊張感を持っている」といった話をしました。すると、その翌年に日刊ゲンダイさんからお声がけをいただいて、忘れもしない2022年7月7日、所属していた音楽事務所スマイルカンパニーの会議室で担当の方に「連載をやりませんか」と。つまり、この本はスマイルカンパニーから始まった本になる(笑)。

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