【四月歌舞伎評】仁左衛門と玉三郎の共演…劇的で至福な、夕方6時5分からの20分間

公開日: 更新日:

 極端に言えば、今月の歌舞伎座は夕方6時5分から25分までの20分だけでいい。仁左衛門と玉三郎の『神田祭』だ。

 仁左衛門の鳶頭がただただかっこいい。玉三郎の芸者が、ひたすら艶やか。

 舞踊劇なのでドラマらしいものもない。この2人も名前はなく、「鳶頭」と「芸者」でしかない。それなのに、何よりも劇的なのだ。

 仁左衛門・玉三郎は半世紀にわたり共演を重ねてきた。その時間が観客を至福の時へと導く。ラスト、花道を去るときに、2人は笑顔で客席を見渡して会釈をする。それは、役者・仁左衛門と玉三郎としてのようでもあり、鳶頭と芸者としてのようでもある。観客としては、もはやそんなことはどうでもよく、この至福の時がこの1秒でも長く続いてほしい。そう思っているのに、2人は去り、幕は引かれる。
『神田祭』の前に、仁左衛門と玉三郎の『於染久松色読販』の「土手のお六・鬼門の喜兵衛」があり、ここでも2人は息のあった芝居を見せる。

 長い芝居の中のひとつのエピソードを抜き出して構成したもので、タイトルのお染と久松は出てこない。仁左衛門・玉三郎とも悪人で、ドラマとしても詐欺が失敗する話で面白いが美しさはない。

■関連キーワード

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    ドジャース「佐々木朗希放出」に現実味…2年連続サイ・ヤング賞左腕スクーバル獲得のトレード要員へ

  2. 2

    国分太一問題で日テレの「城島&松岡に謝罪」に関係者が抱いた“違和感”

  3. 3

    ギャラから解析する“TOKIOの絆” 国分太一コンプラ違反疑惑に松岡昌宏も城島茂も「共闘」

  4. 4

    片山さつき財務相の居直り開催を逆手に…高市首相「大臣規範」見直しで“パーティー解禁”の支離滅裂

  5. 5

    ドジャース佐々木朗希の心の瑕疵…大谷翔平が警鐘「安全に、安全にいってたら伸びるものも伸びない」

  1. 6

    小林薫&玉置浩二による唯一無二のハーモニー

  2. 7

    森田望智は苦節15年の苦労人 “ワキ毛の女王”経てブレーク…アラサーで「朝ドラ女優」抜擢のワケ

  3. 8

    臨時国会きょう閉会…維新「改革のセンターピン」定数削減頓挫、連立の“絶対条件”総崩れで手柄ゼロ

  4. 9

    阪神・佐藤輝明をドジャースが「囲い込み」か…山本由伸や朗希と関係深い広告代理店の影も見え隠れ

  5. 10

    阪神・才木浩人が今オフメジャー行きに球団「NO」で…佐藤輝明の来オフ米挑戦に大きな暗雲