著者のコラム一覧
北島純映画評論家

映画評論家。社会構想大学院大学教授。東京大学法学部卒業、九州大学大学院法務学府修了。駐日デンマーク大使館上席戦略担当官を経て、経済社会システム総合研究所(IESS)客員研究主幹を兼務。政治映画、北欧映画に詳しい。

Mrs. GREEN APPLE「コロンブス」は何が問題だったのか? 映画で「奴隷制」を理解する

公開日: 更新日:

 スティーブ・マックイーン監督の「それでも夜は明ける」(2013年)も必見だ。自由黒人(奴隷の身分から解放された自由人とその子孫)にもかかわらず奴隷商人に拉致された音楽家の12年にわたる奴隷生活を描く。キウェテル・イジョフォーら俳優の演技、美しい映像、ハンス・ジマーの音楽、すべてが超絶にエモく、アカデミー賞作品賞を受賞。女性奴隷を演じたルピタ・ニョンゴも助演女優賞を獲得、これでブレークした。

 奴隷はギリシャ・ローマの時代から存在している。しかしコロンブスの航海に端を発する南北アメリカ大陸の奴隷制は今に至るさまざまな問題(人種差別や南北問題等)の要因になっている。特に北米の綿花農園での奴隷制は、アメリカ・欧州・アフリカ間の「三角貿易」の根幹を形成し、莫大な利益を大英帝国にもたらして資本主義が勃興する原資蓄積の基盤となった。古い話のようでいて現代の資本主義社会に直結する問題なのだ。

 カリブ海に浮かぶ仏領マルティニク島が生んだ詩人エメ・セゼールは「ヒトラーの蛮行(ホロコースト)と同じことを、白人は植民地でとっくのとうにやっていた」と指摘し「植民地化が植民地支配者をいかに非文明化・野獣化・堕落させたか」を問うている。そのマルティニク島を「発見」したのがコロンブス、マルティニク島で生まれ育った没落貴族の娘ジョセフィーヌを妻としたのがナポレオン、皇帝に即位して欧州中に戦火を広げたナポレオンに失望したのがベートーベンだ。猿たちの敬礼シーンもあるMV「コロンブス」、投げかけている問いは重い。

▽北島純(きたじま・じゅん) 映画評論家。社会構想大学院大学教授。東京大学法学部卒業、九州大学大学院法務学府修了。駐日デンマーク大使館上席戦略担当官を経て、経済社会システム総合研究所(IESS)客員研究主幹を兼務。

■関連キーワード

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • 芸能のアクセスランキング

  1. 1

    萩本欽一〈34〉私の“運”論 大谷翔平のカネを使い込んだ通訳に「小さな声で『ありがとう』」

  2. 2

    高橋成美「渋幕→慶応」だけでは読み解けないズバ抜けた回転の速さ 世界選手権ペアで日本人初の銅メダル

  3. 3

    バナナマン日村が簡単に復帰できそうにない「もう1つの理由」…レギュラー11本抱える人気者のジレンマ

  4. 4

    中居正広氏が熊本地震被災地を支援と報道 引退後も変わらないチャリティー精神と芸能界復帰の可能性

  5. 5

    矢沢永吉が秋ツアーで"また"歴史を変える!「長者番付1位」と驚きの成り上がり秘話

  1. 6

    松本若菜「ジュラシック・ワールド」吹き替え《棒読み》論争再燃…暗雲漂う主演ドラマに新たな逆風

  2. 7

    中村倫也が「風、薫る」に大貢献…妻・水卜麻美アナとの「ずっと仲良く」「にこやかな」近況

  3. 8

    「恩人だけど、嫌いな人の代表」亡くなった板東英二さんが複雑な感情を抱いたプロデューサーの名前

  4. 9

    松本若菜“シャイニング顔”で奮闘も…「君の好きは無敵」視聴率4.3%からの反撃を阻む“アラ還コンビ”

  5. 10

    馬場典子アナの「人生の転機」は日テレ入社7年目“福澤一座”の旗揚げ公演の初舞台

もっと見る

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    スマスロ『からくりサーカス2』にユーザーから厳しい評価 射幸性高い人気シリーズが直面する「2作目のジンクス」

  2. 2

    安青錦3度目Vはアッパレだが、私の大の里への評価は甘かった。両横綱よ「13勝の壁」を破ってみせよ

  3. 3

    東証で新たな動き…1月~7月までに上場廃止を選択する企業が過去最多のナゼ

  4. 4

    矢沢永吉が秋ツアーで"また"歴史を変える!「長者番付1位」と驚きの成り上がり秘話

  5. 5

    真夏の珍事? 共産党が“野党第1党”に大躍進したワケ…潜在読者掘り起こした電子版「赤旗日曜版」

  1. 6

    Snow Man目黒蓮と佐久間大介が学んだ城西国際大メディア学部 タレントもセカンドキャリアを考える時代に

  2. 7

    中京大中京から享栄へ、大藤監督が明かす“異例の転身”の真相

  3. 8

    巨人ドラ1候補に花巻東・古城大翔が急浮上! 父はG戦士「振り向けば古城」、岡本和真の後釜育成急務

  4. 9

    9月党人事を前に深まる鈴木幹事長とのミゾ…支持率急落の高市政権「裏金軍団復権」の時限爆弾

  5. 10

    バナナマン日村が簡単に復帰できそうにない「もう1つの理由」…レギュラー11本抱える人気者のジレンマ