口癖は「うちの血が濃い」…義母の“幻想”を崩壊させた息子の行動。愛情の深さはDNAで決まるの?

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コクハク

「うちの血が濃い」という一方的な言葉

 幸せなはずの結婚生活に影を落とす、姑との問題。令和の時代でも根強く残る嫁姑トラブルに直面したケースをご紹介します。

【令和の嫁姑問題】

「うちの孫、やっぱり“うちの血”が濃いのよね〜」

 そう言って笑う義母の言葉に、ユカ(36歳・会社員)は一瞬だけ手を止めた。

 食卓には義妹の娘とユカの息子、どちらも同じ祖母の孫が並んでいる。けれど、その言葉はあまりにも一方的だった。

「娘の子って、顔も性格もやっぱり似るのよ。血がつながってるって不思議ねぇ」

 そう言いながら義母は、義妹の娘の髪をなでていた。

 ユカの4歳の息子が「ぼくも!」と笑って手を伸ばしても、「はいはい、待っててね」と軽くあしらわれる。

 その瞬間、ユカは心の奥で小さく扉が閉まる音を聞いた気がした。

【読まれています】『私の子どもは見えてないの? 写真がない孫の存在…義母の“愛情の序列”を思い知った母の決意』

義母の“深くない言葉”にえぐられる

 義母に悪気がないことは分かっている。

 でも、その“うちの血”という言葉が、まるで「あなたの子は外側」と言われているように聞こえた。

「息子の子には“嫁の血”も入ってるでしょ。だからね、やっぱり娘の子の方が自分に似てる気がするのよ」

 義母はそう続けた。

 ユカは笑ってうなずいたものの、内心は穏やかではなかった。

 帰りの車の中で、夫に思わず聞いた。

「ねえ、“血の濃さ”って何? 私の子もあなたのお母さんの孫だよね?」

 夫は苦笑しながら「母さんの口癖だよ。深い意味はないよ」と言ったが、その“深くない言葉”ほど、人の心を刺すものだ。

科学的根拠はないけれど

 実際、こうした“娘の子びいき”は珍しくない。

「娘の子は自分のDNAを感じる」「息子の子は他人の血が混じってる気がする」──。

 そんな言葉を、世代の違う祖母たちは無意識に口にする。

 だが、科学的には根拠がない。孫は息子の子であろうと娘の子であろうと、祖父母から25%ずつ遺伝子を受け継ぐ。

“血の濃さ”なんて、数字で見ればまったく同じなのだ。

 それでも、“自分の血を感じたい”という欲求は、人間の本能のように根深い。

 子育てを終えた世代にとって、「自分が続いていく」という実感を得るのは孫の存在しかない。

 そして“娘の子”の方が、過去の自分と重ねやすいのだろう。

DNAで愛情の量が決まるわけじゃないけれど

 ユカの義母も、まさにそうだった。

「この子(義妹の娘)を見てると、昔の私みたい。髪の癖もそっくりなの」

 そう言って笑う義母を見て、ユカは気づいた。

 ――義母は娘の延長線孫を見ているのだ、と。

 一方で、ユカの息子は“息子の先にいる誰かの子”。つまり、“自分の知らない家庭”の中で育っている。

 そこに、“外の血”を感じてしまうのかもしれない。

「でもさ、DNAで愛情の量が決まるわけじゃないよね」

 そう言うと、ユカの友人マリは頷いた。

 彼女の母親も同じようなタイプで、「娘の子=本当の孫」とよく口にしていたという。

「けど、私、仕事で忙しくて母に任せっきりだったの。結果的に、母が一番かわいがってるのは息子の嫁の子なのよ。毎日一緒にいるから」

愛情を決めるのは…

 ――愛情は“血のつながり”より、“接する時間の濃さ”で決まる。それを実感したのは、義母が足を悪くして入院したときだった。

 病室に一番に駆けつけたのは、意外にもユカの息子だった。

「おばあちゃん、これぼくが描いたの!」と、幼稚園で描いた絵を持っていった。義母は涙ぐみ、「こんなに優しい子に育ててくれてありがとう」とユカに頭を下げた。

 その日を境に、義母の言葉が少しずつ変わっていった。

「“うちの血”って言葉、もうやめようと思ってね。血じゃなくて、心がつながってるんだね」

 その言葉に、ユカはようやく救われた気がした。

本当の家族を決めるのは、DNAじゃない

 人は、見えない“血”に安心を求める。けれど、本当に人をつなぐのは、DNAでも姓でもなく、過ごした時間と心の温度だ。

「血の濃さ」を誇るより、「関わりの深さ」を積み重ねた方が、きっと本物の“家族”に近づける。

 愛情とは、遺伝ではなく選択の積み重ね。毎日の“おはよう”と“ありがとう”の中に、絆は育っていく。

 ――血はつながっていなくても、心でつながる。

 本当の家族を決めるのは、DNAじゃなく、“一緒に生きてきた時間”なのかもしれない。

(おがわん/ライター)

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