著者のコラム一覧
松尾潔音楽プロデューサー

1968年、福岡県出身。早稲田大学卒。音楽プロデューサー、作詞家、作曲家。MISIA、宇多田ヒカルのデビューにブレーンとして参加。プロデューサー、ソングライターとして、平井堅、CHEMISTRY、SMAP、JUJUらを手がける。EXILE「Ti Amo」(作詞・作曲)で第50回日本レコード大賞「大賞」を受賞。2022年12月、「帰郷」(天童よしみ)で第55回日本作詩大賞受賞。

NHK、旧ジャニタレ起用再開のサスガ!「われわれは疑惑の風化に麻痺しすぎ、無自覚すぎではないか」

公開日: 更新日:

1年経ってスマイル社、ジュリー氏、福田淳社長率いるスタート社の会見はあわせてゼロ

 非上場のオーナー企業が株主構成を公開する義務はない。そんなこと、大人なら誰だって知っている。だが創業者の性加害問題がこの国におよぼした影響の大きさを考えれば、法的な義務がなくても社会的な説明義務はあるとぼくは考える。ジュリー氏が株を手放した証拠がない以上、所有しつづけている可能性は排除できない。現在も所有しているとすれば、配当は受け取らずとも利益を内部留保しておきさえすれば、結局それは株主であるジュリー氏のもの。こんなザルな仕組みがまかり通っていい道理はない。

 昨年9月7日と10月2日の2回にわたり、旧ジャニーズ事務所は記者会見を開いた。初回でジュリー氏は「ジャニーズ事務所といたしましても、わたくし藤島ジュリー景子個人といたしましても、ジャニー喜多川に性加害はあったと認識しております」と断言した。東山紀之新社長からは「鬼畜の所業」「今後の人生をかけ、そして命をかけ、この問題に取り組んでいきます」という一世一代の大見得、じゃなかった、声明が飛びだした。

 第2回にはジュリー氏は体調不良で欠席。東山氏が、長年事務所を支える立場にあったにも拘らず性加害問題について公の場で見解を示すことなく9月に退任した白波瀬傑前副社長について「説明責任がある」と言い、次なる3回目の会見開催を半ば公言した。2回とも進行にはいろんな不備が見受けられたとはいえ、たとえジグザグ道であろうと事態が少しでも前進するならばと願った人は、ぼくを含め多かったはずだ。

 それから1年。スマイル社、ジュリー氏、福田淳社長率いるスタート社の会見はあわせてゼロ。ただの一度も開かれなかった。何ということだろう。白波瀬氏については、説明どころかその姿さえまだ公になっていない。さらに、新旧会社の分離についての情報は、スマイル社公式サイトの発表が事実上すべて。スマイル社と同社をサポートするメディアの「風化待ち」はあからさますぎやしないか。

 そしてわれわれは疑惑の風化に麻痺しすぎ、無自覚すぎではないか。性加害問題へ真っ当な怒りを表明する者が現れても、すぐに「カッカすんな」「ほっとけ」と叩く人たちがいるが、あれは何なのか。スマイル社の詭弁を指摘しようものなら「細かい」「しつこい」「冷静になれ」「寛容になれ」と、あたかも自分は達観者であるかのような〈謎の上から目線〉を披露する人びと、あれも何なんだ。去勢された家畜のボスか。

■関連キーワード

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    梅野隆太郎は崖っぷち…阪神顧問・岡田彰布氏が指摘した「坂本誠志郎で捕手一本化」の裏側

  2. 2

    阪神に「ポスティングで戦力外」の好循環…藤浪晋太郎&青柳晃洋が他球団流出も波風立たず

  3. 3

    阪神・佐藤輝明が“文春砲”に本塁打返しの鋼メンタル!球団はピリピリも、本人たちはどこ吹く風

  4. 4

    自民両院議員懇談会で「石破おろし」が不発だったこれだけの理由…目立った空席、“主導側”は発言せず欠席者も

  5. 5

    広末涼子「実況見分」タイミングの謎…新東名事故から3カ月以上なのに警察がメディアに流した理由

  1. 6

    参政党のSNS炎上で注目「ジャンボタニシ」の被害拡大中…温暖化で生息域拡大、防除ノウハウない生産者に大打撃

  2. 7

    国保の有効期限切れが8月1日からいよいよスタート…マイナ大混乱を招いた河野太郎前デジタル相の大罪

  3. 8

    『ナイアガラ・ムーン』の音源を聴き、ライバルの細野晴臣は素直に脱帽した

  4. 9

    初当選から9カ月の自民党・森下千里議員は今…参政党さや氏で改めて注目を浴びる"女性タレント議員"

  5. 10

    “死球の恐怖”藤浪晋太郎のDeNA入りにセ5球団が戦々恐々…「打者にストレス。パに行ってほしかった」