著者のコラム一覧
増田俊也小説家

1965年、愛知県生まれ。小説家。北海道大学中退。中日新聞社時代の2006年「シャトゥーン ヒグマの森」でこのミステリーがすごい!大賞優秀賞を受賞してデビュー。12年「木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか」で大宅壮一賞と新潮ドキュメント賞をダブル受賞。3月に上梓した「警察官の心臓」(講談社)が発売中。現在、拓殖大学客員教授。

「時代に挑んだ男」加納典明(12)畑さんが「ほうほう、ほうほう」って呼ぶと、林の中から馬が現れるんだ

公開日: 更新日:

同じ原野でも違って見える

加納「うん。そうそう」

増田「道産子なんか体重が何トンもあったり。脚なんかサラブレッドの5倍か10倍くらい太くて、たてがみがライオンみたいにふさふさで凄い迫力があります」

加納「そうなんだよ。道産子なんか放牧しておいて平気な馬だから、王国のなかの林や湿地を自由に歩いたり走ったりしてるわけだ。それで畑さんが『ほうほう、ほうほう。ほうほう』って呼ぶと林のなかから次々に現れる。で、畑さんがジャンバーのポケットに入れてたお菓子なんかをやってた。それを横で見ながら『いいなあ』って思ってた。いいんだよ、その畑さんと道産子たちの関係が」

増田「典明さんが飼ってた4頭は道産子じゃないんですか」

加納「クオーターとか、他の雑種もいたし。いろいろいた。中央競馬のバリバリのサラブレッド、ダービーと皐月賞取ったタニノムーティエ*の弟も来てた。俺は体重があるからあんまりサラは乗っちゃいけないんだ。足やっちゃうから。でも、乗ったこともあって、それはやっぱり別世界だったな」

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