6月も歌舞伎座は尾上菊五郎・菊之助の襲名披露…世代交代のみならず子ども世代の成長も披露
敵対関係が頂点に達したところで真相が分かり、松王丸は安堵し源蔵は驚愕し、そこから和解と共感へと転じていくわけだが、二人は別の組織の人間なので、手を取り合って泣くことはできない。その距離感が、この二人は絶妙である。共演機会が少ないので馴れ合いにならず、それがプラスになっている。
悲劇のあとは、仁左衛門が大勢の若い役者とともに『お祭り』で祝祭気分にして、お客さんを送り出すという趣向。
夜の部は『暫』で始まる。團十郎、梅玉、芝翫、鴈治郎をはじめ多くの役者が揃い、間接的に、菊五郎・菊之助の襲名を祝う一幕となった。團十郎はパワー全開で、その大音声は歌舞伎座の壁を震えさせるほど。團十郎が発するオーラとパワーが舞台全体をも輝かす。まるで太陽のようだ。
そのあと口上があって、菊五郎・菊之助による『連獅子』。菊之助の必死さから生まれるエネルギーを、菊五郎はどう受け止めていいのか戸惑っているようで、リアルな父子関係が垣間見えた。
今月の七代目は口上に出るだけだが、存在感がすごい。座頭は主役なのが普通だが、「舞台に立たない座頭」というものが成り立つのだ。
(作家・中川右介)