石田ひかり53歳、今を生きる女性に伝えたい“楽しく生きていく”ためのメッセージ|映画『ルノワール』

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コクハク

 1986年のデビューから、映画『ふたり』『はるか、ノスタルジイ』や、連続ドラマ『悪女』、連続テレビ小説『ひらり』、『あすなろ白書』と瞬く間に人気者へと駆け上がった石田ひかりさん(53歳)。結婚後は、子育てのために仕事を抑えている時期もありましたが、お子さんが大きくなった現在はふたたび俳優業もフル活動、今年も映画にドラマにと大活躍中です。

 公開中の映画『ルノワール』で、仕事に追われる母親を演じている石田さんに、ご自身も子を持つ母親としての体験や、同じ時代を生きる女性たちへのひと言を聞きました。

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娘たちが独立したときに感じた寂しさ

――映画『ルノワール』では11歳の女の子のお母さんを演じていますが、石田さんご自身もふたりのお子さんがいらっしゃいますね。

 はい。ふたりとも大きくなったので、私の子育てからは手が離れました。

――手が離れたとのことですが、寂しさを感じることはありましたか?

 家を出ていったときは、しばらくはダメでした。寂しくて寂しくて。娘たちが使ってもいないお布団を干していました。それを自分で外から見ると、家に娘たちがいるように思えるんです。

 出かけるときにも、誰もいない2階に向かって「行ってきます」と声をかけて。娘たちには「余計に寂しくないの?」と言われましたけど。それくらいちょっと病んでいた時期がありましたね(笑)。

――そうなんですね。

 一緒に住んでいたときも、常に喋っていたわけではありませんし、顔が見えない日もありましたけれど、ここに帰ってきているんだという安心感がありました。

 それが、上の子は海外に行って、触れることもできませんでしたし、下の子も、近くではありましたけれど、同時期に家を出ていたので、毎日会うことはできませんでした。なので、心配が大きくて。あとは、あまりにもあっけなく家を巣立っていかれたので、「こんなものだったのか」と。

「空の巣症候群」に襲われたことも

――なるほど。そのときの子ども側は夢いっぱいの状態でしょうけど。

「空の巣症候群」というんでしょうか。自分が全く必要とされていない人間になってしまったような感覚になりました。だから、布団を干したりしていたのだと思います。ちなみに今は、一度巣立った子が戻ってきています。

※空の巣症候群……子どもが成長して独立したことにより、巣(家)が空っぽになってしまったことで、多くの保護者が感じる憂うつで不安な心身の不調。

――今は石田さんもお仕事に本格的に復帰されていて、とてもお忙しそうです。

 はい。出ていく前とは全く違います。「この家にいるのは全員大人だよ。だからもうママは何もやらないよ。出ていく前までの時代は終わったよ」と。そういう距離感を保っています。

同世代の女性に伝えたいこと

――今の時代を共に生きる同年代や年下の女性たちに、人生を楽しく生きていくために、何かひと言いただけませんか?

 人生はあっという間なので、やりたいことをやって欲しいです。体が動く時って意外と短いですから。若いうちに心も体も頭も、フルに活用して。

――石田さんが先日まで出演していた人気ドラマ『続・続・最後から二番目の恋』では、輝いている先輩方に囲まれていましたね。

 本当に、みなさんステキな方々ばかりで、どうやったらあんなふうに歳を重ねられるんだろうと思います。(中井)貴一さんも(小泉)今日子さんもみなさん。

――やはりみなさんからは、パワーが伝わってきますか?

毎日は楽しみの種に満ちている

 パワーはもちろんなんですけど。でもね、詰まるところ、素晴らしいのはやっぱりお人柄です。結局、シンプルな、その結論に達します。そのお人柄を育むのにも関係すると思うのだけれど、私、日々の生活には“種”が大切だと思うんです。

――種、ですか?

 たとえば、私、絵画とかって、よくわからないんですけど、それでも、なるべく展覧会とか、そういったところには出かけて行くようにしています。いつか分かりたいなと思いながら。

 足を運ぶことで、自分の中の種を植え付けていると思っているので。展覧会に限らず、なんでも、それがいつどんな形で芽を出すか分かりませんから。

――なるほど。

「どんな形で芽を出して、花を咲かせてくれるかな」

 もしかしたら一生、芽を出さないかもしれませんけど(笑)。でも、「どんな形で芽を出して、花を咲かせてくれるかな」というのが、人生の楽しみだと思ってるんです。読書にしろ、展覧会にしろ、たとえばこの映画『ルノワール』を観ていただくにしてもそうだと思うんです。日々の生活にかかわることすべてが種だと。いつ、どんな形で自分に影響を与えてくれるのか、楽しみが出来ますよね。

――ではとにかく出かけたほうがいい? ダラダラはしないほうがいいですか?

 そんなこともないと思います。ダラダラする時もあってもいいんじゃないでしょうか。それだって種を植える土壌になっていくかもしれないし。そうやっていくうちに、人間力じゃないけれど、厚みが増していって、いつどんな形で、何かに結びついていくかもしれない。答え合わせはこの先に、きっとありますから。ともかく、この先に楽しみを持っていられるといいなと思います。

映画『ルノワール』作品概要

『ルノワール』は全国順次公開中

長編デビュー作『PLAN 75』(22)が第75回カンヌ国際映画祭でカメラドール特別賞を受賞した早川千絵監督最新作。1980年代後半の日本を舞台に、郊外の家に暮らす11歳のフキ(鈴木唯)が、豊かな感受性と想像力を膨らませながら、仕事に追われる母(石田)や闘病中の父(リリー・フランキー)ら、不完全な大人たちの孤独や痛みに触れていく。

(C) 2025「RENOIR」製作委員会 / International Partners

(望月ふみ)

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