「明治・大正・昭和の変な広告」福田智弘著
「明治・大正・昭和の変な広告」福田智弘著
江戸時代の暖簾や看板にはじまる広告は、時代の変化とともにその手法や内容が進化してきた。
ゆえに昔の広告には、違和感を覚えるものも多数ある。しかし、当時の技術や社会情勢を知ると、決して変ではなく、むしろ称賛すべき点も多数見つかるという。
例えば、日本初のヌードポスターとして有名なあの「赤玉ポートワイン」(大正11年 寿屋)。裸でワインを飲むなんて変な広告となりかねないが、ワインの赤色と女性の白い肌のコントラストが際立つよう考え抜かれたもので、同ポスターは当時、ドイツの「世界のポスター展」で1等賞にも選ばれているそうだ。
本書は、明治から戦中の昭和10年代までの面白広告を取り上げ解説したビジュアルブック。
たくさんの栗が土下座をしている絵柄のインパクトのある広告は、「九里丸」という企業のもの。
焼き栗屋が起源だという九里丸は、楽隊を組んで街頭宣伝を行う「チンドン屋」として有名な企業で、紙面にも楽隊をイメージしてたくさんの栗を並べたということらしい。
ちょんまげにスーツ姿の男性がそろばんで仕事をしているイラストが印象的な「タイガー計算機」(昭和3年)は、「そろばんなんてもう古い」ということを表したものだという。
ほかにも、世界一有名なネズミのキャラクターを無許可で使用していると思われるワックスの広告(昭和13年)、エビスビールの広告かと思いきやえびす様が抱えているのはニワトリ、その胸には星のマーク、背景が朝日というビールメーカーのコラボ広告(明治40年)、さらには「何がなんでもカボチャを作れ」と命じる戦時中のポスター(昭和19年)まで、158もの広告を取り上げる。
「広告は時代を映す鏡」の言葉通り、当時の空気感を味わえる面白本だ。
(河出書房新社 2200円)