「金鳳花のフール」山上たつひこ著
「金鳳花のフール」山上たつひこ著
絵本作家の綾瀬純一の元に、ある日「私があなたを産んだの」と主張する年下の女性が現れた。彼女の名前はエミュー。今年28歳になった純一をなぜ若い彼女が産めるのかと問い詰めると、純一を身ごもったのが22歳で、ある事情で見かけの年齢が止まり実際は50歳。純一の父親は当時結婚していた夫の弟の12歳の少年で、純一自身は一度流産して水子の国に送られた胎児だというのだ。
純一は今の両親が実の親ではなく、自分がある産婦人科医院の前に捨てられていた捨て子であることは知っていた。だが、だからといって今現実に生きている自分が水子であるわけがない。精神状態のおかしな女の妄想話だと思い込もうとしていた純一の前に、さらに追い打ちをかけるように巨大な胎児の外見をした男が現れる。彼は、更生保護振興局の保護調査官を名乗り、純一を産婦人科医院の前に置いたのは自分だというのだが……。
ギャグ漫画「がきデカ」で一世を風靡し、その後「兄弟!尻が重い」「蝉花」などの小説を発表している著者による最新作。絵画的な描写で、この世ともあの世ともつかない幻想世界に読者を誘う。
(フリースタイル 2530円)