「金鳳花のフール」山上たつひこ著

公開日: 更新日:

「金鳳花のフール」山上たつひこ著

 絵本作家の綾瀬純一の元に、ある日「私があなたを産んだの」と主張する年下の女性が現れた。彼女の名前はエミュー。今年28歳になった純一をなぜ若い彼女が産めるのかと問い詰めると、純一を身ごもったのが22歳で、ある事情で見かけの年齢が止まり実際は50歳。純一の父親は当時結婚していた夫の弟の12歳の少年で、純一自身は一度流産して水子の国に送られた胎児だというのだ。

 純一は今の両親が実の親ではなく、自分がある産婦人科医院の前に捨てられていた捨て子であることは知っていた。だが、だからといって今現実に生きている自分が水子であるわけがない。精神状態のおかしな女の妄想話だと思い込もうとしていた純一の前に、さらに追い打ちをかけるように巨大な胎児の外見をした男が現れる。彼は、更生保護振興局の保護調査官を名乗り、純一を産婦人科医院の前に置いたのは自分だというのだが……。

 ギャグ漫画「がきデカ」で一世を風靡し、その後「兄弟!尻が重い」「蝉花」などの小説を発表している著者による最新作。絵画的な描写で、この世ともあの世ともつかない幻想世界に読者を誘う。

(フリースタイル 2530円)

【連載】木曜日は夜ふかし本

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    “お荷物”佐々木朗希のマイナー落ちはド軍にとっても“好都合”の理由とは?

  2. 2

    遠野なぎこさんを追い詰めたSNSと芸能界、そして社会の冷酷無比な仕打ち…悲惨な“窮状証言”が続々

  3. 3

    ドジャース大谷翔平がついに“不調”を吐露…疲労のせい?4度目の登板で見えた進化と課題

  4. 4

    清原果耶「初恋DOGs」にファン失望気味も…《低視聴率女王》待ったなしとは言い切れないウラ事情

  5. 5

    会議室で拍手が沸き起こったほどの良曲は売れなかった

  1. 6

    国分太一が社長「TOKIO-BA」に和牛巨額詐欺事件の跡地疑惑…東京ドーム2個分で廃墟化危機

  2. 7

    兵庫は参院選でまた大混乱! 泉房穂氏が強いられる“ステルス戦”の背景にN党・立花氏らによる執拗な嫌がらせ

  3. 8

    極めて由々しき事案に心が痛い…メーカーとの契約にも“アスリートファースト”必要です

  4. 9

    遠野なぎこさんか? 都内マンションで遺体見つかる 腐乱激しく身元確認のためDNA鑑定へ

  5. 10

    新横綱大の里が直面する「遠方への出稽古慣れ」…車での長距離移動は避けて通れない試練に