「俺たちは虚実、皮膜紙一重を泳いでいるわけだ」…表舞台に出たことのない芸能界の首領たちの生声
先日亡くなった芸能プロダクション、ケイダッシュ会長の川村龍夫には、元テレビ朝日幹部で、テレビ朝日の天皇と呼ばれた皇達也に都内のホテルで話を聞いているときに出会ったことがある。
芸能界を取材している、ぜひ、話を聞かせてほしいと挨拶すると、「(バーニングプロダクションの)周防(郁雄)はあなたの取材に応じたんでしょ、僕はいいよ」と笑っていなされた。なるべく表に出ない、というのがザ・芸能界の首領たちの流儀でもある。
そんな川村に強い影響を与えた、メンターとも言える存在が、田辺エージェンシーの田辺昭知だ。拙著「ザ・芸能界 首領たちの告白」(講談社)では田辺に話を聞いている。
田辺は1938年に東京都で生まれている。15歳のとき、後にホリプロダクションを立ち上げる堀威夫がリーダーを務める「ワゴン・マスターズ」のボーヤがショービジネスの入り口だった。ボーヤとはバンドの下働きの若者のことだ。堀のバンドのドラマーを経て、ザ・スパイダースを結成。メンバーには、堺正章、井上順、そしてかまやつひろしがいる。田辺はこのバンドとホリプロから独立、スパイダクション、そして田辺エージェンシーを立ち上げた。