(85)渡哲也が切ないムードを醸し出す「くちなしの花」

1973(昭和48)年、渡哲也が「くちなしの花」(作詞・水木かおる/作曲・遠藤実)を発売、ケレン味のない歌い方で大ヒットを飛ばした。当時オイルショックでトイレットペーパーの買いだめ騒動が起き、さらに幻の生物ツチノコがブームを起こし、過熱気味にテレビで連日報道していた。
そんなときに「♪い~までは指輪も~ まわるほど~」と渡哲也の渋い声が、世間を落ち着かせるように諭す。さらにサビの「♪くちなしの花の~ 花のかおりが~」「旅路のはてまで ついてくる」そしてリフレインをして聴く人のハートに染み渡る「くちなしの~白い花~」「おまえのような~ 花だった~」。
作詞家の水木かおる(本名・奥村聖二)は「アカシアの雨がやむとき」でビッグヒットを飛ばし「エリカの花散るとき」「花燃え」と花に沿った歌詞を作り続けてきた。
「くちなしの花」の詞を見たとき、作曲家の遠藤実は男の優しさ、やるせなさに気持ちが大きく動いた。流しのギター歌手をしながら作曲を続けていた遠藤実は「ピアノに指一本でメロディーを奏でる」を信念にしていた。
「くちなしの花」はその通りの曲作りである。コードはAm/Dm/E7と何とも単純な流れだ。だが何回聴いても歌っても、飽きがこない。
この記事は有料会員限定です。
日刊ゲンダイDIGITALに有料会員登録すると続きをお読みいただけます。
(残り620文字/全文1,155文字)
【ログインしていただくと記事中の広告が非表示になります】