「いまいちばん美しい日本の浄化絶景」MdN編集部編

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「いまいちばん美しい日本の浄化絶景」MdN編集部編

 自然が織り成す美しい風景に遭遇した人は、よく「心が洗われる」と口にするが、本書は、まさに、そうした「ただその場所に立つだけで心のざわめきが静まり、目には見えないものがすっと浄化されていくような不思議な力をもった」日本各地の風景を収めた写真集。

 まずは「水の風景」から。

 苔むした岩肌から流れ落ちる兵庫県の「シワガラの滝」や、水流が辺りの樹木の新緑の鮮やかな緑に染まったかのようにすがすがしい秋田県の「伏伸の滝」、流れ落ちた水が突き出した岩肌に当たり、水墨画のような風景をつくり出す奈良県川上村の二段滝「御船の滝」、そして大きな滝壺がコバルトブルーの栃木県「おしらじの滝」など、さまざまな滝の風景が並ぶ。

 その水音までもが聞こえてきそうな、時に激しく、時にやさしく流れ落ちる滝を見ていると、心にたまった澱まで流し去ってくれそうだ。

 そうした滝の風景と並んで収められた福岡県「篠栗九大の森」の蒲田池の風景は、ひときわ異彩を放っている。

 池の中から「落羽松」という巨木がギリシャ神殿の柱のように何本もそそり立ち、その合間から差し込む朝日が水鏡に映り込む。

 まるで原始の風景のようでもあり、見ていると心の底からエネルギーが湧いてくるのを感じる。

 ほかにも、朝もやに包まれた福島県の新緑の「柳沼」や紅葉に染まる山梨県の「鐘山の滝」、さらに東京にもこんなスポットがあったのかと驚かされる「ネジレノ滝」など。

 思えば水は不思議な存在だ。ある時はすべてを流し、またある時は包み込む。生命の源であり、ヒトはそのDNAに刻まれた記憶にない記憶に懐かしさを感じ、水のある風景に癒やされ、浄化されるのかもしれない。

 後半は空の「雲と光と星」がつくり出す浄化の風景が収められる。

 岐阜県の安峰山展望台から北アルプスを望む一枚は、低く垂れこめた雲の間から幾筋もの光芒が降り注ぎ、幻想的な景色をつくり出している。

 はるかかなたまで見渡す限り幾重にも重なり合う目覚めたばかりの山々を朝もやが包み込み、昇ったばかりの朝日に照らされ、柔らかなオレンジ色に染まっている奈良県・紀伊山地野迫川村の一景、紅葉に染まる山々を滑り台のようにして朝日に照らされた雲が流れ落ちる「滝雲」を一望する新潟県の枝折峠からの眺め、富士山の山頂付近に竜のようにのたくる彩雲、朝日だろうか夕日だろうか、水鏡と化した北海道の摩周湖の水面に映るピンクに染まった雲と青空の競演、そして長野県奥穂高岳の巨大な山容のシルエットの上にかかる天の川など。

 大自然がのぞかせる一瞬の輝きをとらえた作品が見る者の心のモヤモヤを受けとめ、洗い流してくれる。

(エムディエヌコーポレーション 1980円)

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