高市首相が招いた「対中損失」に終わり見えず…インバウンド消費1.8兆円減だけでは済まされない
高市首相が軽はずみに振り上げた“拳”が日本経済に影を落とし始めている。中国政府による日本への渡航自粛の呼びかけは、台湾有事が集団的自衛権を行使できる「存立危機事態になり得る」とした高市答弁への対抗措置だ。中国からの訪日観光客が大幅に減れば、経済損失の試算額は年間約1.8兆円に上る。互いに引けない日中関係の冷え込みは長期化必至で、日本経済のダメージは雪だるま式に膨らみかねない。
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「安いニッポン」を求め、今年の訪日外国人数は9月時点で累計3165万500人となり、過去最速で3000万人を突破。うち中国からは前年比42.7%増の748万7200人で、全体の約4分の1を占める。
旺盛なインバウンド需要に頼る日本経済の足元を見た対抗措置だが、中国政府の訪日自粛要請は初めてではない。2012年にも日本の尖閣諸島国有化への報復として同様に呼びかけ、団体旅行のキャンセルが急増。中国からの訪日客は1年間で25.1%減少した。
野村総研エグゼクティブ・エコノミストの木内登英氏は、当時と同じ規模で今回も訪日客が減った場合、インバウンド消費の減少額は向こう1年間で1兆7900億円と試算。実質GDPを0.29%押し下げるという。内閣府の試算だと、日本経済の潜在成長率は前年同期比プラス0.6%(今年4~6月期)で、その半分近くを削る効果を持つことになる。
「今の中国人観光客は自国の経済停滞を経て、コロナ禍前の高級品“爆買い”から“身の丈消費”へと打って変わり、訪日時の消費額は減少傾向にある」とは、東京財団政策研究所・主席研究員の柯隆氏だ。こう続ける。
「訪日リピーターも多く、中国政府に安全面のリスクを警告されても彼らは日本の治安の良さを実感しています。政府にニラまれるのを恐れ、中国の旅行会社による団体旅行の販売中止は相次ぎそうですが、12年当時ほど訪日客は減らないとみています」


















