「尼僧少尉 カタリーナ・デ・エラウソ」坂田幸子編訳

公開日: 更新日:

「尼僧少尉 カタリーナ・デ・エラウソ」坂田幸子編訳

 時は16世紀末。スペイン北部の町サン・セバスティアンの良家に生まれたカタリーナ・デ・エラウソは、当時の慣習により4歳で女子修道院に入り修道生活を送る。しかし15歳のとき、脱走を実行、髪を切り、男装して男として生きることを決意。スペイン国内を放浪した後、見習水夫として新大陸へ渡る。新大陸では、スペインの征服戦争にも参加し、その活躍によって少尉の位を授けられるが、喧嘩や戦闘で何度も死に瀕し、死刑の処刑直前で恩赦を受けたり、最後に実は女性であることを明かし、故国へ戻る……まさに波瀾万丈の人生を送った。

 このエラウソについての噂は、彼/彼女が帰国した1624年前後からスペイン国内で広まり、出生から帰国するまでの半生をつづった読み物が出回ったり、エラウソを主人公として戯曲も創作される。

 本書は17世紀末に書き写された半生記を訳出したものに関連論考を収めたもの。半生記は一人称の「自伝」形式で書かれているが、元々本人が書いたものがあったのか、第三者が創作したのかは不明。また叙述に飛躍があったり前後の関係が不明な箇所もあるが、エラウソがたどった破天荒な冒険譚の面白さは十二分に伝わってくる。

 この「自伝」は後にメキシコやスペインで映画化されたり、いくつかの翻案小説(ド・クインシーや佐藤春夫など)も生まれている。また近年ではフェミニズムの視点からエラウソの生涯が見直されてもいるという。

 日本にも“帯刀の女流詩人”として知られる原采蘋(江戸後期)、儒学者で頭山満ら玄洋社のメンバーを育てた高場乱(幕末・明治初期)、男性用の二重回し姿で往診する「男装の女医」として有名な高橋瑞(明治中期)、諜報活動に従事し“男装の麗人”として名を馳せた川島芳子(昭和初期)などの男装者がいる。エラウソの生涯は、こうした男装史の先蹤をなす貴重な記録である。 〈狸〉

(図書出版みぎわ 2860円)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    京本大我も父・政樹もスカウトしていたジャニー喜多川社長 成城小学校に通う頃の写真を見かけて即電話

  2. 2

    加納典明(2)草間彌生さん主導で乱交パーティーが繰り広げられ、俺は…

  3. 3

    北島三郎(3)「北島ファミリー」の長女・原田悠里が語る御大

  4. 4

    江口&松嶋「救命病棟24時」が反町「GTO」の二の舞いにならないワケ…13年ぶり復活作の“決定的な違い”

  5. 5

    山本美月は九州の女子校で偏差値トップ「筑紫女学園」から明大農学部へ 祖父も生物教師の“リケジョ”

  1. 6

    萩本欽一〈40〉バイト中に傷をつけてしまった車の持ち主の家を数十年越しに訪ねたら、500坪の大豪邸だった

  2. 7

    日本ハム大砲レイエス引き留めにかかる驚愕金額の「内訳」 巨人でさえマネーゲームから脱落へ

  3. 8

    バナナマン日村が簡単に復帰できそうにない「もう1つの理由」…レギュラー11本抱える人気者のジレンマ

  4. 9

    草間彌生さんを訪ねたら“いきなり乱交パーティー” 俺は考える暇もなく、とにかくシャッターを切った

  5. 10

    内閣改造で維新が大臣2ポスト“おねだり”の波紋 「入閣待機組」渋滞中の自民党からは反発必至