(6)深夜のホットドッグ
旅仕事に出ると、必ずといっていいほど寄る店がある。常宿ならぬ常酒場である。仕事柄、出張中の仕事終わりは、夜もそろそろ更けかかる頃になる。疲れをとるには宿へ帰ってシャワーを浴びて、ベッドに横になるのがいちばんだが、そうはいかないのが、厄介なところである。
先日は、大阪の中心部、淀屋橋で仕事を終えると、10時半になっていた。タクシーを拾えばホテルまで10分程度だが、気が付けば歩きだしていた。土佐堀川を渡り、堂島川を渡って堂島浜通りを左へ入る。目指すは「堂島サンボア」。昭和9年創業の老舗バーだ。サンボアの神戸での発祥は1918(大正7)年で、現在までにのれん分けを通じて、大阪、京都、神戸、東京に計15店が開かれ、どの店も、多くの客に愛されている。
「堂島サンボア」は中核的な存在で、現在の店主は三代目。私と年回りが近いこともあって、話しやすく、大阪での酒の仕上げに必ずといっていいほど立ち寄る。
頼むのはハイボールと決めている。角ハイが大ブームになるかなり前から、私はサンボアでは角ハイボールと決めていた。
「もっとええ酒も置いてるのに、ハイボールのことばかり書くから、お客さんも角ばかりですよ」
たまには少し奮発してもっと高級なウイスキーはどうですか、という意味なのだが、私はそれには乗らない。ここでは、いつもの、ダブルの、氷なしの、濃くて真っ当な、ハイボールがいい。

















