著者のコラム一覧
世良康

広島県福山市出身。1948年生まれ。釣り歴40年余りの元日刊ゲンダイ記者。アユ、ヤマメ、磯釣りなどに親しむ。著書に「アユ・ファイター10年戦記」「釣りの名著50冊」「続・釣りの名著50冊」「首都圏日帰り地魚食堂38選」「文人・文士・食通が綴った絶品あゆ料理」(いずれも、つり人社刊)など。

公開日: 更新日:

「鮎釣り海釣り」稲葉修著

 稲葉修は、ロッキード事件の首魁田中角栄に逮捕状を出した当時の法務大臣である。

 生まれはサケの町・新潟県村上市。川や海の釣りに精通し、この本を読めば、口も達者だが、文章にもたけた知略家であることがわかる。

「五十川」と題されたページを開いてみよう。

 昭和51年7月27日、ロッキード事件で角栄が逮捕された前日のことが書かれている。

 法務大臣はその日、故郷の村上市近くの五十川で、一家を挙げてのんびりアユ釣りに興じていた。

 午後になり、法務省の刑事局長から電話が入った。川から上がって受話器を取ると「明日、角栄を逮捕したいが、本日中に逮捕状を裁判所に請求したい。許可をいただきたい」とのこと。

 稲葉は「やむを得ませんな」と承諾。その後は何食わぬ顔で日暮れまでアユを釣り、夜には地元選挙区で講演会をこなし、夜行列車で帰京。翌日の角栄逮捕に備えた。

 家族にも悟られることのない冷静な行動で、世紀の逮捕劇は混乱なく遂行された。

 口絵に稲葉の釣り写真が載っている。激流に竿差してその隙のない姿は名手も顔負けだ。

 (二見書房)

【連載】ベテラン釣り記者が厳選!いま読みたい釣りの名著ベスト7+1冊

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    高市首相が招いた「対中損失」に終わり見えず…インバウンド消費1.8兆円減だけでは済まされない

  2. 2

    実は失言じゃなかった? 「おじいさんにトドメ」発言のtimelesz篠塚大輝に集まった意外な賛辞

  3. 3

    現行保険証の「来年3月まで使用延長」がマイナ混乱に拍車…周知不足の怠慢行政

  4. 4

    長女Cocomi"突然の結婚宣言"で…木村拓哉と工藤静香の夫婦関係がギクシャクし始めた

  5. 5

    「NHKから国民を守る党」崩壊秒読み…立花孝志党首は服役の公算大、斉藤副党首の唐突離党がダメ押し

  1. 6

    国民民主党でくすぶる「パワハラ問題」めぐり玉木雄一郎代表がブチ切れ! 定例会見での一部始終

  2. 7

    ドジャース大谷翔平が目指すは「来季60本15勝」…オフの肉体改造へスタジアム施設をフル活用

  3. 8

    男子バレー小川智大と熱愛報道のCocomi ハイキューファンから《オタクの最高峰》と羨望の眼差し

  4. 9

    長女Cocomiに熱愛発覚…父キムタクがさらに抱える2つの「ちょ、待てよ」リスク

  5. 10

    【武道館】で開催されたザ・タイガース解散コンサートを見に来た加橋かつみ