歌舞伎では古典がダブルキャストで上演される場合、「形」の違いを楽しむのも一興

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 権太は好青年として登場して、一瞬にして小悪人に転じ、そのまま放蕩息子の親不孝者として再登場して悪行三昧をした後で、またも一瞬にして親思いの青年に転じる。観客は権太に二度、騙される。この振り幅の激しいキャラクターを、仁左衛門は変幻自在に演じきる。

 今月は、市川團十郎が博多座と南座で特別公演、尾上菊五郎(八代目)は名古屋の御園座で襲名披露公演、松本幸四郎は来月の新作の稽古のため、中心となるべき三人が歌舞伎座に出ていない。それでも『義経千本櫻』が成り立つのは、平成生まれがかなり力をつけてきたからだ。上の世代はうかうかしていられない。

 その團十郎の南座での『三升先代萩』も見てきた。よく知られる『伽羅先代萩』に、『鞘当』の登場人物を当て、全体を二時間ほどにしたもので、團十郎が早替わりで七役を演じる。テンポよく物語は進み、劇場中がひとつになるライブ感覚があった。團十郎の名作改訂版は当たり外れがあるが、これは大当たり。東京での上演も待ちたい。

(作家・中川右介)

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