(1)なぜ処方薬の薬価よりも高いのか…所得控除はメリット少ない
「スイッチOTC薬」をご存じか。医師の処方箋が必要な医療用医薬品(処方薬)を、薬局などで処方箋なしに自己負担で購入可能にした国承認の医薬品のことだ。国はこの薬を増やすことで年間48兆円に膨れ上がった医療費を削減し、新たな財源にしようと画策している。カラの財布を握りしめ、言葉ばかりが勇ましい高市内閣発足でこの動きに拍車がかかるのは確実だ。庶民はスイッチOTC薬とどう付き合うべきか?
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日本では1983年から現在までに96種類の薬効成分がスイッチ化されています。比較的副作用が少なく、安全性が確認されている胃腸薬、消炎鎮痛薬(発布薬)、花粉症などの抗アレルギー薬、点眼薬、解熱鎮痛薬などが中心です。薬品メーカーは、それらの成分を使い、自由に製品を開発、販売可能になりました。患者は、医者に行かなくても、効く薬を手に入れられます。そこから「セルフメディケーション」という言葉が生まれ、いまは定着しています。
処方薬には国が定めた薬価が適用されます。しかし、スイッチOTC薬は法律上の制限がなくなるためメーカー側が自由に価格設定できます。実際、多くのスイッチOTC薬の希望小売価格は、処方薬の薬価よりも高めです。安いジェネリック医薬品と比較すると、ドラッグストアの実勢価格のほうが、数倍高い場合も目にします。しかも処方薬は3割負担が原則ですが、スイッチOTC薬は全額自己負担です。負担軽減のため、スイッチOTC薬は「セルフメディケーション税制」の対象となっていて、購入金額の所得控除が受けられます。ただし「1年間の購入額が1万2000円を超える部分」で、購入額の合計が1万3000円なら、超過した1000円分しか控除を受けられません。しかも確定申告が必要で、領収書や健康診断の結果などの提示が求められます。わずかな控除のために手間をかける人は、多くないでしょう。


















