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スージー鈴木音楽評論家

1966年、大阪府東大阪市生まれ。昭和歌謡から最新ヒット曲まで幅広いジャンルの楽曲を、社会的な視点からも読み解く。主な著者に「中森明菜の音楽1982-1991」「大人のブルーハーツ」「日本ポップス史 1966-2023」など。半自伝的小説「弱い者らが夕暮れて、さらに弱い者たたきよる」も話題に。日刊ゲンダイの好評連載をまとめた「沢田研二の音楽を聴く1980-1985」、最新刊「日本の新しい音楽1975~」は大好評。ラジオDJとしても活躍。

『キャント・バイ・ミー・ラヴ』まだまだポールのジャンプの高さが物足りない

公開日: 更新日:

アルバム『ハード・デイズ・ナイト』(1964年7月10日発売)③

■『キャント・バイ・ミー・ラヴ』

 アルバム『ハード・デイズ・ナイト』発売前にシングルカットされていて、アメリカですでに大ヒットしていた曲。

 有名なのは、1964年4月4日のアメリカビルボードのチャート。第1位がこの曲で、以下、第2位『ツイスト・アンド・シャウト』、第3位『シー・ラヴズ・ユー』、第4位『抱きしめたい』、第5位『プリーズ・プリーズ・ミー』と全部ビートルズ。大変なことになっている。

 映画『ハード・デイズ・ナイト』がアメリカで公開されたのは、この年の8月なのだが、その数カ月前にすでに「ビートルズがやって来ていた」ヤァ!ヤァ!ヤァ!

 さて、アルバムでいえば、この『ハード~』から4トラックの録音になっている。トラックとは、音が録音されるテープの「道」のようなもので、これまでは2トラックだったのが、一気に倍となったのだ。

 小難しい理屈はさておき、つまりは音がよくなった。ちょっと前に前作『ウィズ・ザ・ビートルズ』の音が「ガチャガチャしている」と表現したが、今作ではかなりクリアな響きとなったのである。

 まぁ、当時に比べて、格段に音質がよくなった最新版の『ウィズ~』と『ハード~』を聴き比べても、あまり差は分からないかもしれないが。

 以上、前置きが長くなったが、楽曲そのものについては、昨日取り上げた曲『ハード・デイズ・ナイト』と比べて退屈に感じるというのが、正直な感想。


 黒人音楽に素材を借りながらも、そこからジャンプして、まったく新しい音楽を構築しようとしているジョンに対して、ポールは、まだまだジャンプの高さが物足りない感じ。タイトル通り「愛は金じゃ買えない」ときれいごとを言うポールと「金をくれ!」(『マネー』)と心から叫ぶジョンの差とでもいうか。

 さて、映画『ハード~』では、この曲は2回流れるのだが、どちらも、ビートルズの4人が、走って跳んで暴れて……の映像のBGMとなっている。超文化系のイメージのビートルズだが、身体能力が案外高い(かもしれない)ことを感じさせる。躍動的な映像の魅力も、この曲への支持を高めたはずだ。

 そんなビートルズの体育会系映像にタイトルを付けるなら「ビートたけしのスポーツ大将」ならぬ「ビートルズのスポーツ大将」でどうか。うまいこと言うたった。高速で走る「カール君」ならぬ「ポール君」、走りの次はジャンプだよ。

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