「投手の墓場」で好投する菅野智之の価値 僕が日本人史上2人目の本塁打を打ったのもクアーズフィールド
よりによって、やっかいな場所で投げることになったな──。
2000年1月、ロッキーズへのトレードを告げられた瞬間、こんなふうに思った。
メッツ時代、ロッキーズの本拠地・コロラド州デンバーで投げた経験があった。
クアーズフィールドは標高1600メートルの高地にある。気圧が低く、空気が薄いため、打球がよく飛ぶ打者有利の球場として知られる。僕が野茂英雄以来、日本人選手2人目の本塁打を放ったのもクアーズフィールドだった。飛距離が出るというより、打球速度が速く、外野の間を抜ける二塁打や三塁打が多くなる。
投手としての制球もままならない。ストレートを投げても思ったところにいかず、ストライクゾーンから外れることが多かった。おまけに変化球は予想外の曲がり方をする。ツーシームを投げたつもりが、逆方向のスライダーのように曲がったことも。フォークは落ちにくかった。要するに投手として、思うような投球をしづらい球場なのだ。
■体調管理も難しかった
移籍して以降もコンディションづくりには苦労した。空気が薄いため、特にランニングが負担になる。頭痛に悩まされたことも何度かあった。マラソンランナーがあえて高地でトレーニングする理由がわかった気がした。
アリゾナ州ツーソンのキャンプ地で持久系のトレーニングが多かったのも、本拠地でより良いパフォーマンスを発揮するためだろう。設定されたタイム以内に800メートルの直線を2本走るトレーニングは本当にキツかった。
本拠地とビジターの試合、高地と平地を行き来するたびに体の感じが異なる。体調管理も難しかった。
2000年のシーズンは29試合に先発して6勝15敗、防御率5.86。前年のメッツでは12勝8敗、防御率4.40だったから、防御率は1点以上悪化した。
そんな「投手の墓場」ともいわれる球場を本拠地にするロッキーズで、開幕から7試合に先発して3勝2敗、防御率3.41と健闘しているのがメジャー2年目の菅野智之だ。
7試合のうち4試合は本拠地で投げ、3勝のうち2勝はクアーズフィールドでマークしたものだけに価値がある。
36歳。昨季より球速がアップしたとはいえ、160キロ近い速球を投げるわけではない。何より制球が良いうえに、配球を工夫していればこそ。今後も経験豊富なベテランらしい投球を期待したい。



















