世界初の「低侵襲冠動脈バイパス術」は開胸手術を不要にするのか
今年1月、胸を切開せずにカテーテルを用いて冠動脈の血流を確保する「低侵襲冠動脈バイパス術(VECTOR法)」が世界で初めて人に実施され、成功したことが明らかになりました。
米国心臓協会(AHA)が発行する心血管の低侵襲治療に特化した学術専門誌に掲載された報告によると、米国エモリー大学や国立衛生研究所のチームが、これまで多くの治療歴があり、血管をはじめとしてさまざまな問題を抱えていた67歳の男性患者に対して実施しました。この男性患者は、以前、傷んだ大動脈弁と置換した人工弁にカルシウムが蓄積したことで、再び交換が必要な状態でした。しかし、左冠動脈の開口部=入り口が人工弁に近接していたため、従来の経カテーテル大動脈弁置換術(TAVI/TAVR)を行うと人工弁が開口部を塞いでしまって心筋への血流を送る冠動脈血流を失い、突然死するリスクが高かったといいます。
そこで、冠動脈の開口部を物理的に危険域の外に移動させてバイパスをつなぐVECTOR法が選択されました。大腿動脈と大腿静脈という脚の血管からそれぞれカテーテルを挿入して左冠動脈主幹部と右心室に到達させ、大腿動脈側のカテーテルを介して挿入したワイヤを、心室中隔(左心室と右心室を隔てる心筋の壁)を貫通させて右心室に通します。さらに、右心室内のワイヤを大腿静脈側から体外へ引き出し、動脈側からはTAVIで新たな大動脈弁治療を行い、静脈側からは閉塞する可能性のある左冠動脈主幹部へのステント治療を人工的に作成したバイパスルートから行うといった方法です。


















