著者のコラム一覧
増田俊也小説家

1965年、愛知県生まれ。小説家。北海道大学中退。中日新聞社時代の2006年「シャトゥーン ヒグマの森」でこのミステリーがすごい!大賞優秀賞を受賞してデビュー。12年「木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか」で大宅壮一賞と新潮ドキュメント賞をダブル受賞。3月に上梓した「警察官の心臓」(講談社)が発売中。現在、拓殖大学客員教授。

萩本欽一(16)「つらいはつらいの向こうにある」棋士・米長邦雄さんが私にしてくれた粋な話

公開日: 更新日:

「今思えば失礼だけど…」

増田「さすが坂田さん、腹が据わってますね」

萩本「それで欄干から奥さんをおろしたお弟子さんが坂田さんに『なぜ止めなかった』と聞いたら『橋の欄干に乗ったのはつらくもなんともないだろうって。本当に飛び込んだ時が初めてつらいんだろう。そのときには俺助けるよ』と。『欄干ぐらいで世間はみんなつらいって言うんだ』ってね」

増田「米長先生がそんな話をしてくれたんですね」

萩本「米長さんに聞いたことがあるの。米長さんはずっと名人のタイトルにだけは縁がなかった(1993年に7度目の挑戦にして名人位を獲得。49歳11か月での獲得は史上最年長)。『米長さんは名人の隣にいて、名人のつらさを知っている。だから時期を見て名人になろうとしてるんだよね』って聞いたの。今思えば失礼だけど、俺の目を見て、米長さん、あっはははってすげえ笑ってた。そのうちに名人を取った。つらいのはわかってるから。もうちょっと後でもいいんじゃねえかってやってたんじゃないかっていう。粋な人でしたね。お洒落な人だった」

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