著者のコラム一覧
大竹聡ライター

1963年、東京都生まれ。早稲田大学第二文学部卒業後、出版社、広告代理店、編集プロダクションなどを経てフリーに。2002年には仲間と共にミニコミ誌「酒とつまみ」を創刊した。主な著書に「酒呑まれ」「ずぶ六の四季」「レモンサワー」「五〇年酒場へ行こう」「最高の日本酒」「多摩川飲み下り」「酒場とコロナ」など。酒、酒場にまつわるエッセイ、レポート、小説などを執筆。月刊誌「あまから手帖」にて関西のバーについてのエッセイ「クロージング・タイム」を、マネーポストWEBにて「大竹聡の昼酒御免!」を連載中。最新刊は「酒好きの記」(集英社新書)

(39)長崎のおでん屋の絶品雑炊

公開日: 更新日:

 6月に拙著が刊行されたので、お世話になっている方々に送ったり、届けたりしている。最高気温が35度を超えた日の夕刻、神田のおでん屋を訪ねたが、開店前だったので本だけ渡して引き上げた。すると、どうしたことか、目も眩むような暑さなのに、おでんが喰いたい。神田から吉祥寺へ向かう中央線の車中でもおでんが頭から離れない。エアコンが効きすぎで少し寒いくらいの車中で、ふと、コロナ禍の直前に訪ねた長崎のおでん屋を思い出していた。

 長崎市随一の繁華街である思案橋横丁に、赤提灯を下げた入口にしぶい縄のれんのかかった店がある。「桃若」というおでんの老舗で、有名な店の一軒だが、おでんの出汁は鶏出汁だ。アゴ出汁がメインではなかったのが意外だったが、イワシの蒲鉾を揚げたものが鍋に浮いているのも、初めて見る光景だった。そして、これがうまかった。

 店ではワシカンと呼んでいる。ワシはイワシ、カンはカンボコの略。カマボコと言わずカンボコと言うらしい。生麩もいいし、巾着もうまい。巾着の中身は野菜と餅の2種類があった。

 酒は櫻政宗。灘の酒ですな。九州の地酒が出るのかと思ったけれど、しぶい灘の酒の上撰辛口を燗付けしてくれる。これが格別だった。

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