(39)長崎のおでん屋の絶品雑炊
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6月に拙著が刊行されたので、お世話になっている方々に送ったり、届けたりしている。最高気温が35度を超えた日の夕刻、神田のおでん屋を訪ねたが、開店前だったので本だけ渡して引き上げた。すると、どうしたことか、目も眩むような暑さなのに、おでんが喰いたい。神田から吉祥寺へ向かう中央線の車中でもおでんが頭から離れない。エアコンが効きすぎで少し寒いくらいの車中で、ふと、コロナ禍の直前に訪ねた長崎のおでん屋を思い出していた。
長崎市随一の繁華街である思案橋横丁に、赤提灯を下げた入口にしぶい縄のれんのかかった店がある。「桃若」というおでんの老舗で、有名な店の一軒だが、おでんの出汁は鶏出汁だ。アゴ出汁がメインではなかったのが意外だったが、イワシの蒲鉾を揚げたものが鍋に浮いているのも、初めて見る光景だった。そして、これがうまかった。
店ではワシカンと呼んでいる。ワシはイワシ、カンはカンボコの略。カマボコと言わずカンボコと言うらしい。生麩もいいし、巾着もうまい。巾着の中身は野菜と餅の2種類があった。
酒は櫻政宗。灘の酒ですな。九州の地酒が出るのかと思ったけれど、しぶい灘の酒の上撰辛口を燗付けしてくれる。これが格別だった。
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