障害は「人類の歴史における当たり前の一部」である「障害者と歴史学」池田嘉郎、北村陽子編
「障害者と歴史学」池田嘉郎、北村陽子編
「障害史」とは耳慣れない言葉だが、1980年代、北米やイギリスにおける障害者運動と障害学の勃興の下で始まった。
身体的、精神的に大多数の他者と異なることに位置づけられる「障害」という概念が生み出された歴史的プロセスや、障害者を周縁化してきた社会構造、制度、思想、文化、基本などの解明を目指す比較的新しい学問だ。これまで歴史学においては、ジェンダー史などと同様に障害の問題が不可視化されていたが、近年さまざまなアプローチがなされている。本書にはそうした研究の成果・動向が概観できる論考が収められている。
各論考のテーマは多岐にわたっている。①日本史研究における障害(者)の通時的史学史②日本古代の国家政策と疾病(障害)者との関係③健康・衛生思想の観点から疾病と障害が歴史的にどう捉えられてきたのか④第1次世界大戦後のソビエト・ロシアにおける障害者兵士やそのほかの障害者に対する社会保障政策⑤20世紀ドイツにおける戦争障害者のリハビリ手段としてのスポーツ⑥日本における草創期盲唖教育の中心を担った民間団体「楽善会」の活動⑦ダウン症のある子どもを育てる母親たちのエゴ・ドキュメント⑧太平洋戦争末期における精神病院の実態。
こう並べただけで障害史が抱える問題の広さがわかる。中でも、戦争障害者の問題は、傷を負った兵士を再び戦力として活用するという国家戦略と社会保障およびリハビリとが密接に関わっていることは注目に値する。
パラリンピックの起源は、1948年にイギリスの病院で開催された戦争障害者たちの競技会であることが、それを示している。
人が生活をしていく中でさまざまな障害を被ることは決してまれではない。障害は「人類の歴史における当たり前の一部」であり、障害史がグローバル・ヒストリーに接続していくことの必然性を本書は明らかにしている。 〈狸〉
(山川出版社 4950円)



















