つかこうへい 熊谷真実 1年10カ月のスピード離婚
                        <1982年1月>
 「今朝、正式に離婚届を出してきました」
 1月29日、自ら用意した都内ホテルの部屋で記者会見に臨んだ劇作家のつかこうへい(当時33)はこう切り出した。
 前年春から、夫人の熊谷真実(同21)と別居状態にあったという。会見に駆けつけた記者たちから驚きの声は出なかった。予想の範囲内だったからだ。
 その10日前、つかは小説「蒲田行進曲」で直木賞を受賞していた。
 受賞会見で「真実さんはなんとおっしゃっていましたか」と聞かれ、「喜んでくれました」と答えたが、その顔がこわばっていたのを記者たちは見逃さなかった。
 夫婦間に何かあったと多くが直感。仲間うちのお祝いのパーティーにも熊谷は姿を見せず、離婚の危機がささやかれだした。
 2人が出会ったのは78年春。つかが演出するロックオペラ「サロメ」のオーディションに熊谷が応募したのがきっかけだった。
 18歳になったばかりで、それまで恋愛経験がまったくなかった熊谷は初対面のつかをいっぺんで好きになってしまった。
                    


















