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増田俊也小説家

1965年、愛知県生まれ。小説家。北海道大学中退。中日新聞社時代の2006年「シャトゥーン ヒグマの森」でこのミステリーがすごい!大賞優秀賞を受賞してデビュー。12年「木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか」で大宅壮一賞と新潮ドキュメント賞をダブル受賞。3月に上梓した「警察官の心臓」(講談社)が発売中。現在、拓殖大学客員教授。

「時代に挑んだ男」加納典明(19) 神話レベルの女性遍歴、「機関銃の弾のように女性が飛んできて抱きつかれた」

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理解不能な魅力があったあの無頼派作家

 
加納「例えば伊集院静*をもうちょっと写真にしとけばよかったなと思いますね。彼はダチだったんです。夏目雅子さんの元旦那で、篠ひろ子さんと再婚して。あいつは不思議な魅力持ってんですよ。いわゆる男らしさとか、そういうことじゃなくて、パターンな、ライクな男子じゃなくて、どっかで見えない魅力を持ってる。見え見えの魅力じゃない魅力、魅力という名がつかない魅力を持ってるんですよ理解不能な魅力なんですよね。だから、そこはそういう意味では面白いやつだったというか」

※伊集院静(いじゅういん・しずか):在日韓国人2世の小説家。後に日本に帰化。1981年『小説現代』に寄稿した『皐月』でデビュー。1984年、7年の不倫交際を経て夏目雅子と結婚したが、その夏目は1985年に白血病で早逝した。その夏目とのことをモチーフとした『受け月』で1992年に直木賞を受賞。同年、現在の妻である篠ひろ子と再婚した。2023年、胆管癌で死去。73歳だった。

増田「それにしてもポイントポイントで典明さんを動かしているのは、いつも人なんですよね。たとえば編集者の石川次郎さんの手引きで雑誌ヌード撮り始めたり、ニューヨークで草間彌生さんに会ったり、畑正憲さんに会っていきなり北海道へ移住したり、山口百恵をテレビで見ただけで『写真に戻りたい。東京に戻りたい』と思ったり」

加納「うん。結局、その落馬のケガはリハビリも含めると、王国には4年いたんですけど、都会での疲れっていうのは、やっぱりそれぐらいかからないと取れないぐらい、もうクタクタになっちゃってた。くたびれてた。それと、もちろん女性問題だけじゃないけどもガールフレンドがたくさんできて、男性の仕事関係もたくさんいて、人間関係が増えすぎてて」

増田「ものすごく女性にもてたというのは、神話レベルの伝説になっています」

加納「ハッハハハハ(笑)。当時、俺、かっこよかったから」

増田「たしかに当時の写真を見ると俳優みたいです」

加納「若いころ東京にいるときはね、機関銃の弾のように女性が次から次へと飛んできて抱きつかれた思い出がある。それこそ機関銃の弾のようだった。女性を撮影してると、中には撮影が終わるか終わらないうちにしがみついてくる女の子もいたりした。交通整理するだけで大変だったよ(笑)」

増田「撮影っていうのは、裸じゃなくて服着てても性的な行為だって言う人が多いですよね。レンズなんて突起物だし、ペニスを想起させますしね。撮影中はいろんなスタッフの視線をモデルは1人で浴びて『可愛いね』『奇麗だね』って連発されるわけですし」

(第20回につづく=火・木曜掲載)

▽かのう・てんめい:1942年、愛知県生まれ。19歳で上京し、広告写真家・杵島隆氏に師事する。その後、フリーの写真家として広告を中心に活躍。69年に開催した個展「FUCK」で一躍脚光を浴びる。グラビア撮影では過激ヌードの巨匠として名を馳せる一方、タレント活動やムツゴロウ王国への移住など写真家の枠を超えたパフォーマンスでも話題に。日宣美賞、APA賞、朝日広告賞、毎日広告賞など受賞多数。

▽ますだ・としなり:1965年、愛知県生まれ。小説家。北海道大学中退。中日新聞社時代の2006年「シャトゥーン ヒグマの森」でこのミステリーがすごい!大賞優秀賞を受賞してデビュー。12年「木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか」で大宅壮一賞と新潮ドキュメント賞をダブル受賞。3月に上梓した「警察官の心臓」(講談社)が発売中。現在、拓殖大学客員教授。

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