お金はあるのになぜ? 増える「老人の万引」をどう減らす
高齢者による万引が後を絶たず、東京都が有識者研究会を立ち上げた。なにしろ2015年に都内で摘発された万引犯のうち、65歳以上が3割近くを占めたのだ。5年前は2割そこそこだったので、存在感はグンと増してしまったことになる。
そういわれても多くのサラリーマンは「うちの親に限って……。第一、生活に困っていないし」と思うかもしれないが、捕まる高齢者の8~9割は財布にお金を持っている。貯金が底をつき、やむにやまれずパンを盗む、という姿ではない。
NPO法人「全国万引犯罪防止機構」事務局次長の稲本義範氏が言う。
「スーパーなどで万引をする高齢者の多くは、財布にお金を持っていながら、総菜や刺し身、お肉などの売り場に直行し、品物をマイバッグに入れるのです。最初から狙ってやっている人が圧倒的で、出来心とは違う。原因は、ゆがんだ節約心。たかが万引ではないか、という感覚も持っているのかもしれません」
“初犯”の場合、警察に通報されずに説諭で終わるのが多いことも、感覚をマヒさせる。大した反省もせず、次は別の店で万引をし、また捕まっても説諭で帰され違う店で……を繰り返す。いよいよ行くところがなくなって同じ店で2度目となると、さすがに警察に通報されるが、身元確認後に帰される微罪処分が一般的。そのあとで捕まるとようやく検挙となるが、その間に、規範意識はどんどん薄れてしまうのだ。