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五木寛之 流されゆく日々

1932年福岡県生まれ。早稲田大学露文科中退。66年「さらばモスクワ愚連隊」で第6回小説現代新人賞、67年「蒼ざめた馬を見よ」で第56回直木賞。76年「青春の門 筑豊篇」ほかで第10回吉川英治文学賞を受賞。2002年には第50回菊池寛賞を受賞。NHKラジオ深夜便「歌の旅人」、BSフジ「五木寛之『風のcafe』」放送中。日刊ゲンダイ本紙連載「流されゆく日々」はギネス記録を更新中で、16年9月5日に連載10000回を迎えた。著書に「風の王国」「大河の一滴」「他力」ほか、「親鸞」三部作など多数。

連載10000回 流れ流されて四〇年 <1>

 きょうのこの原稿で、どうやら連載10000回になるらしい。あらためて、よく続いたものだと思う。
 ある日、講談社を中退した川鍋(孝文)さんが、相談があるとやってきたのが、きっかけだ。話をきけば、こんど新しい新聞を出すという。
「日刊ゲンダイという夕刊誌です。『紙』じゃなくて『誌』ね。毎日発行する雑誌という感覚なんだけど」
 そこにコラムの連載をやってほしいという依頼だった。
「毎日の連載ってのは気が重いなあ。週一回でどうですか」
「いや、いや、なんでもいいから、勝手に書きなぐってりゃいいんです。どうせ3カ月か半年でツブれますから」
 川鍋さんは週刊現代の編集長時代に散々お世話になった恩人である。早稲田の仏文卒とは思えないハチャメチャな編集者だった。大出版社を横に出て、型破りの夕刊新聞を出すとなれば手伝わないわけにはいかないではないか。
「原稿料は、これで。よろしく」
 と、片手をヒラヒラと振って風のごとくに消え去った。それが40年以上も昔のことだった。その川鍋さんも今は故人となった。日刊ゲンダイのほうは、しぶとく生き残っている。
 創刊時の連載のお仲間は、松本清張、柴田錬三郎、富島健夫、などの各氏が記憶に残っている。みんな故人である。40年という歳月は、音もなく流れ去っていくのである。
 当時の日刊ゲンダイは、野武士、浪人の集団だった。トップがトップなら、社員も曲者ぞろい。その頃、よく右翼が押しかけてきていたが、そのときの社員たちの応待が変っていた。ふつうは一応ビビったりするものだが、ゲンダイは全然ちがう。
「オレがいく」
「いや、オレにいかせろ」
 と、競いあって飛びだしていく。そんな新聞だから、やたら向う気がつよいのだ。全共闘の猛者などももぐり込んでいたから、当然かもしれない。まあ、梁山泊みたいなものである。
 そんななかで、〈しゃべくり年代記(クロニクル)〉というサブタイトルをつけて連載がスタートした。ふつうの文章ではなく、饒舌体のラフな文体でいくつもりだった。最初のころから、できるだけストックをしない、ギリギリで原稿を入れる、というのが初心である。担当編集者はさぞかし大変だったにちがいない。
(この項つづく)

――協力・文芸企画

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