オペラ芸術監督・大野和士の勇気と大英断に驚かされた
新国立劇場で世界初演されたオペラ「アルマゲドンの夢」を見に行った。
作曲は藤倉大さん。イギリスに拠点を置いて世界を舞台に活躍している作曲家で、SF作家H・G・ウェルズの短編小説が原作。台本作家もイギリス人、演出家はアメリカ人だった。
近年、日本発の新作オペラでこれほどの大きなメッセージ性を持った作品を見たことはなく、本当に驚かされた。
大衆を駆り立てる扇動者により、社会が戦争へと向かおうとするなか、主人公たちは大きな流れに巻き込まれていく。戦争にノーを突きつけ、抵抗し、切に平和と自由を求める人間の姿が生々しく描かれていた。これは明らかに、民主主義を否定して全体主義へと傾きつつある現在の世界情勢への痛烈な批判だ。
私も同業者なので、作品自体の音楽性に触れることはしないが、感心したのは新国立劇場のオペラ芸術監督であり、今回の指揮をした大野和士さんの大英断、そして勇気である。