著者のコラム一覧
柏耕一

出版社勤務後、編集プロダクションを設立し、出版編集・ライター業に従事。ワケあって数年前から交通誘導員として働きはじめる。その実体験をもとに悲哀あふれる筆致でつづった「交通誘導員ヨレヨレ日記」(発行・三五館シンシャ、発売・フォレスト出版)がベストセラーに。著書に「岡本太郎 爆発する言葉」(さくら舎)ほか。現在は交通誘導員卒業を模索中。

2500万円の税金滞納。以来、坂道を転がるように…

公開日: 更新日:

 こんなことが何度かあればどうなるか。やる気がなくなる。身から出たサビとはいえ、稼いだ尻から差し押さえられるとなれば、以前のように仕事に身が入らない。当然、坂道を転がるように会社の収入はなくなっていった。

 税務署は差し押さえの強硬手段を取る前には、取引先へお尋ねの文書を送付したり、直接、電話でこちらの売掛金の有無を照会する。未払い金があれば差し押さえる。

 これが私には堪えた。なにしろ信用がなくなる。取引先出版社にしても税務署に目をつけられている不良編集プロダクションなどと関わりたくはない。自分のところにどんなとばっちりが及ぶかわからないからだ。ある時、税務署員が家に訪ねてきて「大変失礼な言い方ですが、あなたの年齢(当時私は67歳)からいって延滞税を含めた約2500万円の税金を支払うのは無理でしょう。会社を清算したらどうですか」と親切に勧めてくれたことがあった。

 私はそこまで踏ん切れない部分と生来の面倒くさがりな性格もあって、すぐそれを実行することはなかった。しかし食わねばならない。

 高齢の私は交通誘導員になるしかなかった。

【連載】73歳・交通誘導員 哀愁の日々

最新のライフ記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    横浜・村田監督が3年前のパワハラ騒動を語る「選手が『気にしないで行きましょう』と…」

  2. 2

    文春が報じた中居正広「性暴力」の全貌…守秘義務の情報がなぜこうも都合よく漏れるのか?

  3. 3

    マツコが股関節亜脱臼でレギュラー番組欠席…原因はやはりインドアでの“自堕落”な「動かない」生活か

  4. 4

    松井秀喜氏タジタジ、岡本和真も困惑…長嶋茂雄さん追悼試合のウラで巨人重鎮OBが“異例の要請”

  5. 5

    巨人・田中将大と“魔改造コーチ”の間に微妙な空気…甘言ささやく桑田二軍監督へ乗り換えていた

  1. 6

    5億円豪邸も…岡田准一は“マスオさん状態”になる可能性

  2. 7

    小泉進次郎氏8.15“朝イチ靖国参拝”は完全裏目…保守すり寄りパフォーマンスへの落胆と今後の懸念

  3. 8

    渡邊渚“初グラビア写真集”で「ひしゃげたバスト」大胆披露…評論家も思わず凝視

  4. 9

    「石破おろし」攻防いよいよ本格化…19日に自民選管初会合→総裁選前倒し検討開始も、国民不在は変わらず

  5. 10

    大の里&豊昇龍は“金星の使者”…両横綱の体たらくで出費かさみ相撲協会は戦々恐々