著者のコラム一覧
柏耕一

出版社勤務後、編集プロダクションを設立し、出版編集・ライター業に従事。ワケあって数年前から交通誘導員として働きはじめる。その実体験をもとに悲哀あふれる筆致でつづった「交通誘導員ヨレヨレ日記」(発行・三五館シンシャ、発売・フォレスト出版)がベストセラーに。著書に「岡本太郎 爆発する言葉」(さくら舎)ほか。現在は交通誘導員卒業を模索中。

2500万円の税金滞納。以来、坂道を転がるように…

公開日: 更新日:

「あれ、柏さん何しているの?」

 東京・池袋の現場で問いかけてきたのは顔見知りの寿司屋の親方だった。その6、7年前まで私は池袋に出版編集プロダクションの事務所を10年ほど構えていた。その寿司屋は事務所の近くだったこともあり、よく通っていた。親方が驚くのも無理はない。

 ここのところすっかり無沙汰とはいえ、馴染み客がガス工事現場でヘルメットに交通誘導員の制服を着て片側交互通行のため赤い誘導灯を振っているのだから……。

 ようやく交通誘導員の仕事も板についてきたとはいえ、私もやはり気恥ずかしかった。

「いやあ、見ての通りですよ。交通誘導員をしています」

「え、そうなの。なんでまた……」

「あ、仕事中なのでそのうちお店にお邪魔した時にでも」と答えるのが精いっぱいだった。

 なぜ私が警備員になったかといえば、ご多分に漏れずカネがなくなったからである。出版社勤務後にはじめた三十数年にわたる出版編集プロダクション経営は順調だった。たくさんのベストセラーも手掛けた。出版不況といわれる今とは違って、時代もよかったのか1冊で3000万円前後の印税収入を得た本も何冊か生み出した。

最新のライフ記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    ドジャース佐々木朗希に向けられる“疑いの目”…逃げ癖ついたロッテ時代はチーム内で信頼されず

  2. 2

    ドジャース佐々木朗希の離脱は「オオカミ少年」の自業自得…ロッテ時代から繰り返した悪癖のツケ

  3. 3

    注目集まる「キャスター」後の永野芽郁の俳優人生…テレビ局が起用しづらい「業界内の暗黙ルール」とは

  4. 4

    柳田悠岐の戦線復帰に球団内外で「微妙な温度差」…ソフトBは決して歓迎ムードだけじゃない

  5. 5

    女子学院から東大文Ⅲに進んだ膳場貴子が“進振り”で医学部を目指したナゾ

  1. 6

    大阪万博“唯一の目玉”水上ショーもはや再開不能…レジオネラ菌が指針値の20倍から約50倍に!

  2. 7

    ローラの「田植え」素足だけでないもう1つのトバッチリ…“パソナ案件”ジローラモと同列扱いに

  3. 8

    ヤクルト高津監督「途中休養Xデー」が話題だが…球団関係者から聞こえる「意外な展望」

  4. 9

    “貧弱”佐々木朗希は今季絶望まである…右肩痛は原因不明でお手上げ、引退に追い込まれるケースも

  5. 10

    備蓄米報道でも連日登場…スーパー「アキダイ」はなぜテレビ局から重宝される?