都内に15店「麺屋武蔵」社長・矢都木二郎さんの巻<1>
本格手打 もり家東京店(東京・浜松町)
もり家さんは、讃岐うどんの本場・香川の高松に本店を構える超人気店。その東京店が、JR浜松町駅金杉橋口を出てすぐのところにあります。金杉橋口を出て第一京浜方面に歩くと1分ほど。ポンテせとうみという瀬戸内アンテナショップの2階です。
僕はラーメンを仕事にしているだけに、ほかの麺類も気になります。パスタやそばも食べにいきますし、うどんは讃岐も稲庭も大好き。香川でも東京でも讃岐うどんを食べ歩きしました。その中で、東京の讃岐うどんならここが一番といえる店です。
何がいいって、とにかく麺の状態を大事にしていること。おいしいうどん屋さんはどこも生地を打って足踏みして麺を手打ちされます。その基本は守っていても、茹で置きしている店が多い。そうすると、茹で置きの時間が長いほど、うどんのコシや食感が損なわれてしまいます。
その点、こちらは茹で置きしません。注文を受けてから茹でています。注文すると、「うどんを茹でるので10分ほどお時間をいただきます」と説明されますから。
麺は茹でたて、出汁も雑味なし
茹でたての麺は、断面を見れば分かります。茹でると、四隅が湯を吸おうとして少し長くなる半面、真ん中は吸水に劣るのでへこみます。エッジが立ったような断面になるのです。もり家さんのうどんが、まさにそれ。おいしさの要因のひとつが、これです。
オーナーの森田真司さんは20年の修業を経て、2001年に高松で本店をオープン。理想の手打ちうどんへの情熱と丁寧な仕事ぶりが評価され、瞬く間に人気店に。NHKの「プロフェッショナル仕事の流儀」に出演したのも納得です。
茹で置きすると、このエッジがダレてきてしまいますから、皆さんもうどん屋さんで断面のエッジに注目してください。エッジが立っていれば、茹でたての証拠でおいしいですから。
いりこや昆布、土佐節で丁寧に取った出汁は透き通っていて、雑味がまったくありません。定番のぶっかけ(600円)は最高だし、個人的には、シンプルな醤油うどん(600円)に生卵をトッピングしていただくのが好物です。卵かけご飯のうどん版で、スルスルーッとうどんのおいしさがダイレクトに感じられていい。日本橋の料理店ゆかりとコラボしたカレーうどん(1200円)もお薦めです。
おでんは酒のアテにピッタリ
出汁を生かしたおでんは、大根やかまぼこなど(牛筋のみ180円で、ほかは120円)はたっぷりと出汁を吸ってほっくりと茶色い。その色合いながら、いいあんばいで酒のアテにちょうどいい。
パリッと揚がった天ぷらも外せません。せとうみ天盛りは、ニンジンやカボチャなど季節の野菜天5種、ちくわ天1つ、魚介天1種(この日はキス)に、何とエビが2本ついて1000円はオトクです。
ほんとすべての料理が丁寧で、おいしい。自分の胃袋の許容量が10だとすると、12くらい食べてしまいます。うどんは、小(1玉)、中(1・5玉)、大(2玉プラス100円)とサイズを選べるので、小を2種類頼むと大満足です。
(取材協力・キイストン)
■本格手打 もり家東京店
東京都港区浜松町2―6―5
浜松町エクセレントビル ポンテせとうみ内2階
℡03・5843・7767
■麺屋武蔵
1996年創業。現在は青山や新宿、池袋など都内に15店舗を展開。企業とコラボするほか、小学校へのラーメン給食の提供や調理専門学校での出前授業など、新しい試みにも積極的に取り組んでいる。
▽やとぎ・じろう
1976年、埼玉県生まれ。城西大卒業後、一般企業に就職するが、大学時代にハマったつけ麺を日本全国に広めたいとの思いから、24歳で麺屋武蔵に転職。3年後、上野店店長に。2013年、先代からバトンを継ぎ、2代目社長に就任。