「なかめのてっぺん」など運営「MUGEN」内山正宏代表取締役の巻<1>
ホルモン千葉 百軒店(東京・渋谷)
この店は、京都に住んでいたころに見つけた店の支店です。関西のお好み焼きは、店の人が焼いてくれるのが基本。こちらのホルモンは、そんな関西風の鉄板焼きスタイルを踏襲し、スタッフがすべて焼いてくれるんです。
単に焼いてくれるだけではなく、焼き方も独特で、コンロの上に傾斜をつけるような工夫がしてあって、鉄板はお客さん側に右肩下がりになる仕組み。下がったところの角をよく見ると、穴が開いています。その下には器にタレが用意されているのです。
このスタイルがとてもいい。イメージとしてはジンギスカンの鍋でしょうか。ジン鍋は山形になっていて、山頂周辺に肉を並べ、ふもとに野菜を敷き詰めて火を通していきます。肉汁がふもとに滴り落ちて、野菜がしんなりして、ウマ味が加わりますよね。その応用編で、黒いタレが最後にいい仕事をするんです。
ホルモンの脂が鉄板からタレの器に滴り落ちて…
何といっても、1人前2800円のコースを召し上がってください。プラスして、数量限定の刺し身を2品頼めば完璧です。先日、お邪魔したときは、センマイとハツ刺し(各880円)とコースをお願いしました。
もちろん、鮮度は抜群で掃除も丁寧です。スタートのビールで、それぞれの食感を楽しみながらコースですよ。
コースは、塩とタレの2段構成で、塩からスタートします。牛の中落ちと丸腸、豚のタン、ノド、首を焼いてくれます。この特製の塩ダレもよくて、サッパリと胃に落ちる。一緒に焼いてくれるモヤシも合います。
鉄板から落ちる脂を眺めていると、「タレはまだつけずに召し上がってください」とクギを刺されます。脂を受けたタレはテリを増し、ウマそうなんです。でも、ガマンですよ。
それらを食べ終えると心臓やホホニク、ホソ(小腸)、アカセン(第4胃袋)に変わります。こちらはタレで。今度は、これらをトングで挟むと受け皿のタレにザブンとつけて、再び鉄板へ。またもや脂がつつーっと穴からタレの器に落ちていくのです。
シメのうどんでショーが完結
部位によって、タレと塩を使い分け、それぞれがしみじみウマい。ビールや焼酎がとにかく進みます。
で、あのタレを何に使うかというと、シメのうどんです。そばと選ぶのですが、僕はうどん派。焼きうどんにして、あのタレをかけると、熱して立ち込めた香りだけでビールを一杯。そうこの店は、提供スタイルがエンターテイナーなんです。しかも味はどれもこれも間違いなしで。
うどんには、生たまごとキャベツ、ネギを加えますが、肉はなし。それでいて濃厚な動物性のウマ味は、鉄板から少しずつ滴り落ちたウマ味の凝縮にほかなりません。
店は道玄坂のラブホ街のど真ん中にあります。カウンターのみですからおふたりでコースをぜひ!
(取材協力・キイストン)
■ホルモン千葉 百軒店
東京都渋谷区道玄坂2―14―17
℡03・3461・2933
■MUGEN 飲食店の運営のほか、消費者と生産者、仲卸などをつなぐ事業、食品リサイクルなどにも力を入れる。炉端焼き店「なかめのてっぺん」を中心に、寿司や天ぷら、カニ鍋など17店を展開。
▽うちやま・まさひろ 1974年生まれ。幼少のころから両親に連れられて割烹料理店で味覚を鍛えられた。調理師学校卒業後は、横浜のロイヤルパークホテルや老舗料亭、銀座の居酒屋などで飲食店経営のノウハウを習得。2006年、独立する。