ばんと(大阪・梅田)“送りバント”が大好きな店主の居酒屋
野球の醍醐味って何だ。
快刀乱麻のピッチングも気持ちいいが、華はやっぱり攻撃か。鮮やかな放物線を描いて外野席の観客を割る白球。強烈な弾丸ライナーでフェンスを直撃する長打。韋駄天が走って走ってサイクル盗塁……。
観戦スタンドで、お茶の間で、ビールを片手に大興奮すること間違いなしだが、これらとは真逆の地味~なプレーに酔うファンもいる。それは送りバントだ。
「自分は犠牲になっても次の塁に進塁させるというフォアザチーム」。店内に張られた壁紙の一文は、店の運営方針でもある。だから店名は「ばんと」。店主の西本竜太さん(40)はこう話す。
「居酒屋なのでひらがなにしてね。ホームランもいいけど、ボクは送りバントが大好き。店のために犠牲になる。困ったスタッフがいたら助ける。そして飲んだお客さんを気持ちよく送る。そんな意味を込めています」
西本さんは元球児。出身地の大阪で小学1年から野球を始め、中学ではボーイズリーグでプレー。高校は岡山県内有数の強豪私立校に遊撃手として留学したものの、憧れの甲子園キップはゲットできなかった。身長187センチ、体重95キロ。ひと目で大型野手とわかるが、それでいて小技を好むプレーヤーだったとは意外。
「あの選手もそう。大ファンなんです」と西本さんが視線を送ったのは、店内に飾られている元阪神・関本賢太郎のレプリカユニホーム。この選手も186センチ、96キロの大型野手ながらバットを思い切り短く持ち、送りバントも絶品だった。さらに犠打日本記録を保持する川相昌弘の巨人時代のバント写真も張ってある。これらを眺めながら一杯やるのもオツだ。