合意文書交わさず口約束がアダに…見えない自動車関税の引き下げ時期で、国内大手7社の損失は2カ月で2000億円に
ダブル更新だ。12日の東京株式市場は、日経平均株価が取引時間中も終値も昨年7月以来となる史上最高値を更新した。株価上昇の要因は、トランプ米政権の関税措置への不透明感が薄らいだことだ。
連休前の8日、訪米した赤沢亮正経済再生相は「相互関税」を巡る日米間の合意内容の食い違いについて、米閣僚から日本政府の要求通り税率を軽減するとの言質を取ったと説明。この修正と同じタイミングで、日本政府が重視する自動車関税も日米合意に基づき、トランプ大統領が27.5%から15%へ税率を引き下げる大統領令に署名すると確認したとしている。
■口約束に口約束を重ね
市場は赤沢氏の言い分を好感し、合意内容が反映されることへの安堵感から自動車など輸出関連銘柄に買いが殺到。史上最高値更新につながったわけだが、自動車関税の行く末には不安もよぎる。
赤沢氏の説明はしょせん口だけの約束に過ぎない。米側は修正時期を明かさないまま。先の関税交渉と同様、合意文書を交わさず、口約束に口約束を重ねているだけだ。
「トランプ政権は各国との関税交渉を同時並行的に進め、おのずと交渉国の優先順位が生じる。トランプ大統領の最大の関心事は中国貿易。11日には対中追加関税の一部停止期限を再び90日間延長する大統領令に署名しましたが、合意済みの日本の修正は後回し。興味を失っていても不思議ではない」(外交関係者)
日本車は今も米国に27.5%の高関税を課せられ続け、引き下げ時期が遅れるほど、メーカーの負担は膨らんでいく。日経新聞の試算によると、トヨタやホンダなど大手7社は1日遅れるたび計約30億円の損失が生じ、1カ月で約1000億円程度に上るという。