「純喫茶図解」塩谷歩波著
「純喫茶図解」塩谷歩波著
大手カフェチェーンの猛威にさらされながらも、常連客の憩いの場、街のオアシスとして魅力を発揮し続けている昔ながらの純喫茶はまだまだある。
本書は、そんな純喫茶の名店を、立体を斜め上から見下ろすように表現する「アイソメトリック」という建築図法で紹介するイラスト図鑑。
JR西荻窪駅南口から徒歩3分の「それいゆ」の創業は1965年。
床には赤地に白いバラが描かれたカーペットが敷き詰められ、店の中央に鎮座する大テーブルの上では4本の大きなサイホンが半日かけてコーヒーを抽出している。そのゆったりとした空間で、おしゃべりを楽しむ人や歌詞を書く音楽関係者など、それぞれが思い思いの時間を過ごしている。
渋谷駅東口から徒歩5分の「茶亭 羽當」は、ダークブラウンで統一された店内のあちらこちらに調度品がさりげなく飾られ、外の喧騒が嘘のように落ち着いた雰囲気。
カウンター背後には色とりどりのカップとソーサーが600客も並ぶ。
季節、そしてお客さんの装いや雰囲気に合わせカップを選び、コーヒーを提供するためだという。
こうした昔ながらのノスタルジックな純喫茶に始まり、かつては店内に噴水もあったという上野の「Coffee Shop ギャラン」などの「豪華絢爛な純喫茶」や、理想的な音響空間を実現するためウィーンのコンサートホールの25分の1のスケールで造った阿佐ケ谷の「ヴィオロン」などの「音を楽しむ純喫茶」、有名建築家が設計した都立家政の「Coffee&Lunch つるや」など「ひとクセ光る純喫茶」まで4つのカテゴリーで18店を紹介。
扉を開ければ、コーヒーの香りとともに「長い年月を重ねたからこそ出来上がった、唯一無二の空間」があなたを出迎えてくれることだろう。 (幻冬舎 1650円)