ジョブズもニーチェも散歩好き 64歳プロ童貞が「毎日同じルート」を歩くワケ

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コクハク

認知症の母と散歩した思い出

 コミックや書籍など数々の表紙デザインを手がけてきた元・装丁デザイナーの山口明さん(64)。多忙な現役時代を経て、56歳の時に仕事中心で働く生き方をドロップアウト。現在は悠々自適な老後(?)を送りながら、還暦過ぎの童貞としてメディアに登場して注目を集めています。今回のテーマは散歩の効能についてーー。

【山口明の童貞日和】

 Hello、本日も童貞なり。

 数年前、まだ母親と実家に住んでいた頃、毎日親子で1時間以上も散歩をしていた時期がある。

 当時の母は認知症を発症したばかりで、目を離すと勝手に家を出て徘徊してしまうもんだから、さすがに長時間歩かせれば疲れて徘徊をやめてくれるんじゃないかって思ったんだ。 

 期待通りにはいかず、しばらくひとり歩きは続いて、その母ももう施設にいるんだけど、なんだか習慣だけが残って、今も毎日ひとりで散歩をしている。56歳でデザインの仕事を完全にやめてから時間だけはあるから、午前と午後に散歩することもある。

 ところで、アメリカ国立がん研究所が65万人の10年間のデータを調べたところ、毎日25分間の「散歩に相当する運動」をする人は、運動不足の人より4年近くも長生きするんだとか。毎日10分のウォーキングでさえ寿命に2年の差が見られたそうだから、それくらい散歩の健康効果は絶大なんだね。

 ちなみに母は今、94歳でもうオレの顔も名前もわからないんだけど、やっぱり足腰だけはいまだにしっかりしているよ(笑)。

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散歩とターンテーブルの共通点

 この連載の内容も散歩しているときに思い付くことが多い。宇宙からインスピレーションをキャッチしている…とか言うと胡散臭いけど、ひらめきとして降りてくる感じがするんだ。

 これまで生きてきた人生で吸収した、大量の情報や無駄な知識の断片が散歩中に頭の中で混じり合って、ある瞬間にひとつの文脈に気づく――これってDJやヒップポップのアーティストがさまざまなレコードの断片をリミックスして新しい音楽をつくり出す手法に似てない?

 だとしたら、オレにとっての散歩はDJのターンテーブルやミキサーみたいな、ナニカとナニカを掛け合わせるための「装置」みたいな存在なのかもね。

 ちなみに、毎日だいたい決まったコースを歩くようにしている。

 ときおり行ったことのない道を歩くと、知らないお店があったりして新鮮で楽しいんだけど、そんな日はなぜかインスピレーションが降りてこないんだよね~。見慣れない景色の中を歩くと、新しい情報を処理することに脳が忙しくなるからかな。

 そんなわけで、毎日のように飽きもせず同じ道を歩き続けながら、頭の中では布施明がカバーした「マイ・ウェイ」って曲の「信じたこの道を私は行くだけ」の一節が流れているんだ。

iPhoneも進化論も散歩中にひらめいた?

 必死に考えても思いつかなかったのに、なぜか考えるのをやめてリラックスしている最中に突然アイデアが浮かんだり、問題の解決法にたどり着いたりすることってあるよね。

 実は、脳は覚醒時には「目の前の課題」を優先して処理しようとするけれど、リラックス時には記憶の奥深くを探索して、無意識にさまざまな要素をつなぎ合わせたりしているらしい。オレが散歩中にいろいろと思い付くのは、そんな脳のメカニズムが関係しているのかな。

 過去の偉人たちも、そんな散歩の効能について知っていたようで、ダーウィンやニーチェ、カントなんかも「散歩が好きだった」と言われている。スティーブ・ジョブズなんて外を歩きながら会議していたくらいだから、iPhoneも進化論も散歩中にひらめいたのかもね。

 だから、行き詰まったら散歩に出かけてみよう。お金がかからず誰にでもできる上に、新たなアイデアやイノベーションまで降りてくるなんでいいこと尽くし。もしなんにも頭に浮かんでこなかったとしても、健康になることは間違いないんだから、家で悶々としているよりよっぽどいいよ!

 それではBye Bye、次回も夜露死苦!!

【アキラのオマコラ(オマケコラム)】

 シャンソンの原曲にポール・アンカが英語の詞をつけて、1969年にフランク・シナトラがカバーして大ヒットした「マイ・ウェイ」。言わずもがな、その後もエルヴィス・プレスリーにシド・ヴィシャス、そして日本では布施明や勝新太郎までカバーしている名曲中の名曲。

 そもそもカバー曲って人のものを「ちょっと拝借」する行為なのに、皆さんそれを忘れたかのように自身の人生を重ね合わせて堂々と歌って、完全に自分のものにしているんだから、すごいよね。

 これって借りた物を返さない、いわゆる“借りパク”ってやつかな…。だけど、こういう図々しさこそが本家を超えて大ヒットする名カバー曲を生むのかもしれない。どのカバーも甲乙つけがたいもんね。

(山口明/プロ童貞・現代アーティスト)

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