「訴えられる…」女装子の妻に“レズビアン”関係がバレる? 不倫の終わりは略奪か、それとも #3

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コクハク

これまでのあらすじ

【不倫依存~婚外恋愛を謳歌する男女】

 菜々美さん(28歳ホステス/独身)はアフターで連れて行ってもらった女装バーで、女装が趣味の直樹さん(43歳エンターテインメント関連/既婚・子供アリ)と知りあい、その後、男女の仲になった。

 だが、行為のときは女装した彼と「疑似レズビアンプレイ」で愛しあうという倒錯的なものに。デートを重ねるにつれ、菜々美さんは自宅マンションにも彼を呼ぶようになった。

 直樹さんに完全に沼ってしまった菜々美さん。そして不倫のゆくえは――。

 気になる最終話の前に、第1話はコチラ、第2話はコチラからお読みいただけます。

幸せな日々

 菜々美さんは語る。

「幸せな日々が続きました。直樹さんは週に1、2度は赤坂の店に通ってくれるし、その後はアフターで新宿の女装バーにいってカラオケやおしゃべりに興じて大はしゃぎ。

 帰りは私の自宅マンションに寄って愛し合って…男性の直樹さんも、女装したナンシーも魅力的で、なによりもその落差にギャップ萌え。『彼のすべてを知っているのは私だけ』と、優越感にも浸ってしまいました」

 そう笑顔を見せる菜々美さんだったが、同時に、不安もわいてきたという。

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「女装」を封印し、父親に徹する

不倫の行方は3パターン。略奪婚するか、別れるか、現状維持。私は現状維持を願っていたのですが…。

 1年ほど経ったころでしょうか。直樹さんが珍しく神妙な表情で赤坂の店に来たんです。

――ごめん、妻に言われたんだ。そろそろ息子のお受験だから、協力してほしいって…。

 開口一番、直樹さんは予想外の言葉を告げてきた。

――えっ…それって…。

 私は目をしばたたかせました。

 聞けば、奥さまは直樹さんも通っていた有名私大の後輩。夫婦ともに、幼稚舎から通っていたそうで…息子さんにも同じ道を歩ませたいようです。

 妻からの要望―それは「女装のナンシー」を封印し、父としての顔に徹してほしいという意味でした。

――仕方ないですよね。大事な時期ですから。

――ああ、子供にとって環境は重要だと思う。公立がダメというのではなく、夫婦共に学んだ気心が知れた学校だし、安心と安全な環境下で息子の成長を見守りたいし、将来への可能性も広げてあげたいんだ。

――直樹さんの考え、すごくよくわかります。お子様のお受験のためにいくつもの塾に通ったり、引っ越したりするケースもあると聞きました。

――まさにそうだね。受験は親と子供の二人三脚。いや、夫婦だから三人四脚だな」

連絡が減っていき…

 菜々美さんは、直樹さんの言葉を聞きながらも、唇を噛んだ。

「夫婦」という言葉が、鋭いナイフのようにぐさりと胸に突き刺さった。

「その日をきっかけに、直樹さんとの連絡が減っていきました。LINEの既読がついても返事はこず、たまに送られてくる短いメッセージには、以前のような情熱も優しさもなくて…。

 家庭に戻って、ちゃんと『父親』として過ごしているんだろうなと思いました。私は『ナンシー』にも『直樹さん』にも会えなくなってしまった…まさかこんな形で終わるなんて…本当につらかったですね」

久しぶりの再会も…

 寂しさと不安が募ったある夜、2カ月ぶりに直樹さんが、赤坂の店に顔を出した。

 ようやく久しぶりに会えた彼は、どこか疲れた表情で言った。

「――最近さ、妻にスマホ見せてって言われるんだよ。菜々美とのやりとりを見られたらヤバいなって思って…。

――私たちのこと、感づかれてるの?

――いや、それはないと思う。気の強い妻だから、僕たちの関係がバレたら、即、妻は君を訴えると思う。

――訴えられる…?

自分から連絡することもなくなり

 菜々美さんの脳裏によみがえったのは、かつて知人女性が不倫相手の妻から慰謝料を請求された話だ。200万円という金額が、妙にリアルだった。

 胸の奥が冷たくなるのを感じた。それからは、菜々美さんからも連絡を絶った。

 夏には江の島に行こうという約束も立ち消えになり、虚しさに包まれながら過ごしたという。自宅マンションに帰ると、ナンシーと過ごした日々が鮮明に思い出されて、涙が止まらなかった。

本気で彼を愛していた

「本当に終わったんだと気づいたんです。あの時間は夢だったのかなって。新宿二丁目に行くこともなくなって…それどころか『二丁目』という言葉を聞くたびに悲しさがこみあげ、店のトイレに駆けこんで泣きました。

 お客さまに泣いている顔なんて見せられない。だから、いっぱい涙を流したあとは、化粧直しをして、また笑顔で客席に戻りました」

 苦しい経験だったが、それでも、菜々美さんは自分の気持ちを否定しないという。

「ナンシーと一緒に過ごした夜や、女装した彼に抱きしめられたあの時間…それがどんなに不謹慎で不道徳であっても、私は本気で彼を愛していたんです」

 そんなある夜、久しぶりに届いた彼からのLINEには、こんな言葉が綴られていた。

――ナンシーは元気にしてるわよ。今は逢えないけど、いつかまた逢えたら…私、菜々美と笑い合える夜が大好きだったの。

後悔はしていない

「読んでいたのはちょうど移動中の電車の中。つり革につかまりながら、私、人目もはばからず号泣してしまって…。

 もちろん、もう以前のようには戻れっこありません…でも、確かに存在した本物の恋が、私の胸に今も息づいている。

 悲しかったけれど、後悔はしてません。ナンシーと過ごした時間は、私にとって宝物…いつか、またどこかで、彼…いえ、彼女かしら(笑)…に会えたらって、少しだけ思ってます」

 どんなに別れにも、痛みをともなう。

 でも、痛みがあるぶんだけ、それは確かに愛だったはずだ。

(了)

(蒼井凜花/作家・コラムニスト)

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