チェーン店から野草まで!食の世界が広がる本特集
「中華料理5000年の文化史」トーマス・デイヴィッド・デュボワ著 川口幸大日本語版監修 湊麻里訳
年々早くなっている夏の訪れ。食欲が減退してしまわぬうちに十分に栄養をつけておきたいところだ。今回は身近なチェーン店から野草まで、食の世界観が広がる本をご紹介。
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「中華料理5000年の文化史」トーマス・デイヴィッド・デュボワ著 川口幸大日本語版監修 湊麻里訳
中華料理と聞いて多くの人が想起するであろう香辛料だが、中国文明5000年の歴史を考えると、それほど古くない。
中国に初めてネギ、ショウガ、花椒が入ってきたのはシルクロード交易が盛んになった7世紀。タマネギやニンニクはたちまち台所の必需品になり、現在一般に認識されている中華料理へと大きく近づいた。それまでの中華料理は、もっぱら酢と味噌を使って風味付けされていたのだ。
遅れること16世紀ごろ、ようやく唐辛子が入ってくる。ほかの香辛料が陸路で入ってきていた一方で、唐辛子は海路だったため、初期の資料では「海椒」(かいしょう)と呼ばれていた。当初は、体内の余分な水分を排出してくれる薬として重宝され、意外にも、広く社会に受け入れられるようになったのは、20世紀に入ってからのことであった。
古代肉料理の再現から、SNSとデリバリーへの過剰な依存など、中国の食文化を328ページにわたって読み解く。 (河出書房新社 3190円)
「身近にあるうまい雑草、ヤバイ毒草」森昭彦著
「身近にあるうまい雑草、ヤバイ毒草」森昭彦著
春の七草のひとつ「セリ」は、水気のある場所を好んで育つ。優しい味を求めるなら小川などの水辺にあるものを、野趣の香味を楽しむなら田んぼから摘むと良い。茎葉は、5月以降は硬く味も落ちてしまうが、白い根っこ部分なら一年中特有の香味を楽しむことができる。
しかし、よく似ている「ドクゼリ」には要注意。世界屈指の猛毒草で、食べると、けいれんによる呼吸困難で死亡する危険がある。見分け方は、水辺であればまるっと太った根茎を半分くらい丸出しにしているのがドクゼリ。それ以外の場所では、葉と茎の形から見分けることができるが、よほど見慣れないと区別は困難。判断に迷ったら“採らない”のが鉄則だ。
そのほか、初学者でも見つけやすくおいしい「ユキノシタ」など、250種類の見分け方から調理法までを徹底解説。見慣れた景色の中に、新たな世界が広がる。 (SBクリエイティブ 1760円)
「世界の郷土ごはん」青木ゆり子監修 岩原和子執筆
「世界の郷土ごはん」青木ゆり子監修 岩原和子執筆
ブラジル名物といえば「シュハスコ」。牛・豚・鶏の各部位ごとに鉄串に刺し、岩塩をふって炭火で焼いたものだ。庭に専用のグリルを持つ家庭も多く、週末にシュハスコパーティーを楽しむという。このワイルドな料理の発祥は牧畜が盛んな南部地域で、カウボーイがたき火で肉を焼いたスタイルが起源とされる。
同じブラジルでも、ところ変われば料理も変わる。北東部バイーア州発祥のシーフードシチュー「ムケッカ・バイアーナ」は、西アフリカ由来のデンデ油とココナツミルクで煮込んだシーフードシチュー。ポルトガルの植民地時代にアフリカからの奴隷の上陸地だった同州には、アフリカに影響を受けた料理が数多く残されている。
75カ国各地で受け継がれる伝統料理162種を、美しい食卓の風景写真とともに紹介。各国の多種多様なお酒などのコラムも充実し、旅した気分になれること間違いなし。 (パイ インターナショナル2090円)
「国民的チェーンめし研究」東山広樹著 蒼井すばるイラスト
「国民的チェーンめし研究」東山広樹著 蒼井すばるイラスト
外食チェーン界の王者「マクドナルド」。その頂点を極めるのは「ダブルチーズバーガー」だ。
そのおいしさを語るには、まずはバンズから理解する必要がある。バンズは、生地をミキサーにかけてグルテンを断裂させる“麩切り”という特殊な工程を経ており、異常なほど口溶けが良い。この食感を採用する目的は、食べたときの一体感。全体のバランスを考慮し、パティはあえて薄めに作られている。
具材の決め手は、2枚のチーズと、塩気と酸味を控えたケチャップだ。両者のうま味成分はともにグルタミン酸。そこに主役であるパティのイノシン酸が掛け合わされると、それぞれのうま味を単独で味わうときより7~8倍強くなる。すべてのパーツがそれぞれのおいしさを最大化させる完璧な構成に、著者は恐ろしささえ感じるという。
ほかにも「ラーメン二郎」から「スターバックス」まで、18品目のチェーンメニューの脳天直撃的うまさを、科学的かつ情熱的に徹底解説。 (カンゼン 1760円)