著者のコラム一覧
森高夕次漫画家・漫画原作者

1963年、長野県生まれ。コージィ城倉のペンネームで89年「男と女のおかしなストーリー」でデビュー。原作を務める「グラゼニ」(「モーニング」連載中)は「お金」をテーマにした異色の野球漫画としてベストセラーに。

今の巨人に「江川と西本」はいるか

公開日: 更新日:

 巨人阪神に4連敗してCS敗退した。阪神に勢いがあったけれど、巨人の選手たちのプレーに物足りなさも感じた。

 今年の巨人には際立った成績を残した選手がおらず、ここ一番で大仕事をやってのける破天荒な選手も見当たらない。かつて巨人に大いに魅了されていた僕としては少し残念な思いもある。

 1980年代、僕が10代だった頃の巨人は光り輝いていた。野球イコール巨人といっても過言ではなかった。鮮烈な記憶として残っているのは当時、エースの座を争っていた江川卓と西本聖の存在だった。

 先日、西本氏を取材する機会に恵まれた。高校時代から怪物といわれ、「空白の1日」で巨人入りした江川氏と、ドラフト外から雑草のごとく這い上がってきた西本氏。才能は江川氏が圧倒的に上でも、西本氏はずっと江川氏に強烈な対抗心を抱き、それが自身の原動力になっていたそうだ。

 西本氏は松山商業高校時代、練習試合で作新学院と対戦、打席に立って江川氏の凄さを目の当たりにし、彼の存在を意識するようになった。巨人で同僚になり、ほぼ隔年で開幕投手を務めた。西本氏は江川氏が先発したら、負けろと思ったこともあったという。西本氏は最終的に勝利数で江川氏を上回る(西本165勝、江川135勝)。2人の生きざまにドラマを感じずにいられない。西本氏はある年の契約更改後の記者会見で「江川さんよりも高い給料がほしい」と発言して物議を醸した。じゃあ、江川はいくらもらってるんだ? と野球選手の年俸に興味を持つようになり、四半世紀が過ぎて「グラゼニ」を描くきっかけにもなった。

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